ウクライナを守るに、安倍晋三よ、仏のロシア向けミストラル級強襲揚陸艦二隻を直ちに購入せよ! ── 「外交とは、<国防と不離一体>」は、無謬の叡智

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 筑波大学名誉教授  中 川 八 洋

 マレーシア旅客機を撃墜し二九八名を殺害したのが「ウクライナ親ロ派」なのか、「ロシアのウクライナ侵略部隊」なのか、あるいは「ウクライナ軍」なのかにつき、さも不明瞭であるかに日本の新聞・テレビは報道する。意図的な誤報だし、悪質な虚報の極み。

 犯人は自明ではないか。つまり、「ロシアの侵略部隊」だと名指しをしない日本の新聞・テレビは、ロシアを宗主国とする“ロシアの新聞社・テレビ局”に成り下がった。日本をロシアの属国に貶める「反日」報道機関が、その正体である。

 だが、ロシアのBUK地対空ミサイルによるマレーシア航空機撃墜問題は、ここまでにしよう。以下は、ヨーロッパでいま巻き起こっている、マレーシア旅客機撃墜から派生した、ある重大問題を論じるものである。

 この問題、日本が北方領土を奪還するに、実に天佑。神仏が微笑んで日本に与えた僥倖のプレゼントである。あとは、安倍晋三が決断するか否かだ。日本国民がこの声を大きく上げるか否かだ。

 それは、ロシアがフランスに発注したミストラル級強襲揚陸艦二隻を、フランスはロシアに渡すべきではないとの声が、蘭英米三ヶ国はもとよりその他のヨーロッパ諸国から猛然と起きている問題のこと。契約前であれば、フランスは直ちに、この軍艦二隻の契約破棄をロシアに通告したに違いない。

 が、フランスは、すでに一隻を完成させ、残る一隻も建造が進んでいる。代金をもらわねばフランスは大損をする。その上に、違約金をロシアに支払わねばならない。

ミストラル級強襲揚陸艦のウラジボストーク配備は、北海道侵攻が目的

 軍事問題にいっさいの関心も知見もなくなった“反・国防国家”日本では、「ミストラルのウラジボストーク(ロシア太平洋艦隊)配備」とか「択捉島単冠湾に配備」とか聞いてても、「すわ! 日本の一大事」と声をあげるものがいない。日本国の安全保障にとって脅威になろうとなるまいと、今では日本人の誰しも無気力・無関心である。自民党国会議員で、国防を論じるものは、今や一名もいない。

 とりわけ、国防を重視するかに目されてきた民族系論客が、北朝鮮やロシアの工作員やそれらのシンパばかりとなっている現情では、日本の国防は風前の灯。このことは“朝鮮人編集者と北朝鮮人執筆者のコラボ”となった民族系月刊誌『正論』『WILL』を一瞥すれば自明。『正論』『WILL』には、日本の視点/日本の国益はなく、金日成史観が基軸になっている。

 また、安倍晋三が「集団的自衛権」にこだわるのも、それは正しい決断だが、安倍には、日本の防衛を米国に今以上に肩代わりさせ、日本の防衛力を弱体化のままにしたいという歪な根性が潜んでいる。このことを安倍は自著『美しい国へ』にもそう書いているし、防衛費の伸びを「今後五年間で1%」すなわち「年0.2%」づつしか伸ばさないことを、国会でも海外でも自慢して吹聴するのもこの証左の一つ。

 日米同盟強化の「集団的自衛権の憲法九条解釈変更」がなぜかすっきりしないのは、安倍の日米同盟強化が、「親米」からではなく、「反米」がない交ぜになっているためである。

 それはともかく、二〇〇六年に一番艦「ミストラル」が就役したミストラル級強襲揚陸艦の主要諸元は、表1。二番艦「トネール」は二〇〇七年就役。いずれもフランス海軍所属。フランスでの艦型分類名は、米国のとはかなり異なり、「強襲揚陸艦」ではなく「指揮・戦力投入艦」。

表1;ミストラル級強襲揚陸艦の諸元

日露戦争直前、チリの軍艦二隻を英国が急ぎ購入して、ロシアに渡るのを阻んだ英国の智慧と友情を、今こそ日本が学ぶべきときだ  

 まず、日本人が忘れてはならない重要歴史を想起してもらわねばならない。

 アルゼンチンがイタリアで建造していた軍艦二隻を、ロシアに渡らぬようにイタリア政府とアルゼンチンとを抱き込み、日本国に売却されるように斡旋してくれたのが、英国であった。約八千㌧級の新鋭戦艦「モレノ→日進」「リヴァダヴィア→春日」である。この、日本人のよく知る歴史と同時に、もう一つの同じような歴史が起きていた。

 「日進」「春日」の二隻の軍艦がイタリアのゼノアを出航したのは、一九〇四年一月九日。日露戦争開戦のたった一ヶ月前。追撃してくるロシア艦隊に撃沈されないよう、英国は一万四千㌧の当時世界屈指の戦艦「キング・アルフレッド」など二隻をセイロン島まで随伴させて完全護衛した。また、実質的な臨時艦長として英国海軍上級士官を両艦に搭乗させた。

 だが、ここで日本人が記憶を喚起すべき歴史とは、以下の事柄。  

 「日進」「春日」購入問題より一年前、英国で建造中のチリの軍艦二隻についても、英国は日本が買うようさまざまに骨を折った。が、日露開戦がさほど逼迫していない一九〇二~三年だったこともあって、貧乏国の日本は金額重視でチリと交渉する愚を犯した。チリもまた、日本の足元を見て値段を釣り上げてきた。

 日本は、適正価額百六十万ポンドまで準備したが、チリはすぐさま百七十五万ポンドに釣り上げた。そこでロシアが百八十万ポンドをチリに提示した。日本側は、買うのを断念した。英国は、このままではロシアにこの二隻の軍艦が渡るので、慌ててロシアよりはるかに高い百八十七万五千ポンドをチリに提示して買いとった。一九〇三年十二月三日で、日露開戦三ヶ月前だった。

 英国には不要な軍艦だが、日本が金欠病で買えないなら代わりに買っておく。これが外交の極意である。友邦を助けてこそ美徳の道義。道義あってこそ真正の外交。

 また、ロシアに軍事力増強をさせないことは、世界の平和秩序の要諦である。世界秩序と友情を大切にした英国外交の美徳ある叡智と行動こそ、百十年を経た今、日本が学んで実践する時ではないのか。

 ミストラル級強襲揚陸艦一隻が、今秋にも、クリミヤ半島セバストポールのロシア黒海艦隊に配備されれば、ウクライナは海岸からロシアの侵攻を受け易くなる。少なくとも、黒海の重要都市オデッサが危ない。オデッサを守りウクライナの危機を救うのが、世界に生きる日本の高貴なる義務である。

 日本はフランス政府と交渉し、即金でこの二隻の強襲揚陸艦を今すぐ購入せねばならない。違約金も日本が支払えば良い。これは、一九〇三年末に英国が日本に教示した外交の極意と対日友情を、二〇一四年にウクライナへの友情をもって返礼するものである。友情と金は天下の回り物だと、日本人は肝に銘じて欲しい。

日本の離島防衛に絶大な機能を果すもので、最高の買い物。二隻は多いというなら、一隻をトルコ海軍かリトアニア海軍に無償貸与すればいい

 安倍晋三は何かというと「離島防衛」をスローガンのように口にする。しかし安倍は、離島防衛の軍事力の整備になるといっさい関心がない。むしろ、足を引っ張る。現に、安倍は空母を建造しようともしない。二万人規模の海兵隊も創設しようとしない。軍事力増強に否定的な安倍のスタンスが、“集団的自衛権反対の集団ヒステリー”を応援する機能を持ったことぐらい、安倍はどうして反省しないのだろう。

 しかも、現在、自衛隊が創ろうとしているのは、海兵隊とはほど遠い、水陸両用機能を持つ数百人規模の部隊。それは戦時編成であれば、一ヶ大隊。連隊でもないし、師団でも旅団ですらない。つまり実戦部隊ではなく、将来の海兵隊創設をする場合の、まさしく実験室レベル的な実験隊。それ以外ではない。

 ともかく、「ミストラル」は、日本の離島防衛に絶大な力を発揮する。そればかりか、日本がこれを購入することは、戦後最高の日本外交として世界の称讃は間違いなく、それは同時に、安倍晋三が国際的に第一級の政治家、“世界の安倍”として世界から称讃の嵐を受けることでもある。

 さらに、「ミストラル」級二隻の購入には、一石三鳥の得がある。

 第一の鳥は、それがウラジボストークや単冠湾に配備されれば、北海道など日本へのロシア脅威は深刻になるが、これを防止する。

 第二の鳥は、ウクライナは日本に感謝し、ウクライナ支援の欧米諸国全体が日本に感謝する。世界は欧米諸国が中心であり、日本の世界外交は格段に円滑化する。外交の要諦は信頼され尊敬されることであって、ODAなどの金のバラマキなど無益有害。なぜなら、それはほんの一瞬、金をもらった時だけの友好であって、外交ではない。低級下劣で無道徳な女が体を売って金や仕事を手にする行為と変わらない。

 第三の鳥は、現在の日本とフランスの関係は、可も無く不可も無いが、これが一瞬にして変貌する。フランスは日本を準同盟国と看做すだろう。米英に加え、日本がフランスとも関係を強化することは、アフリカにおける中共との確執で、フランスが日本側に立って応援してくれることを意味する。アフリカ外交では、フランスの助力こそ百人力。

 さらに、日本の海上自衛隊が、運用要員の不足から、二隻は多すぎると言うのであれば、一隻をトルコ海軍やリトアニア海軍あるいはフィンランド海軍それともポーランド海軍に無償貸与すればよい。安倍は、安倍治世最高の傑作として称讃されるべき「防衛装備移転三原則」を閣議決定した(二〇一四年四月)。これを使わない話はない。宝のもち腐れは避けよう。

 トルコ/リトアニア/フィンランド/ポーランドのいずれも、大の親日国で、またロシアの脅威に戦々恐々としている四ヶ国。彼らは対ロ防衛の海軍力増強は最優先国策としている。これらの国との実態的な準同盟関係づくりが、日本国の安全を向上させる。

 仮にトルコ海軍への無償貸与とすれば、このことでもNATOや欧米は日本に惜しみなく大拍手を送るだろう。これこそが真の外交だ。

クラウゼビッツ/孫子の哲理「外交は、国防(軍事)と不離一体」を噛みしめよう

 平和とは何か。人類が「平和」に関してなした定義は一つしかない。しかも、この定義、数千年の世界史を通じて変化がない。平和とは戦争でない状態、これだけである。

 平和に関するこの定義には、『孫子』に通じる深遠な哲理がある。『孫子』の「戦わずして勝つ」は戦争の極意だが、戦争を未然に防ぐのも「戦わずして勝っている」のと同じ状況を指しているからだ。現状の平和維持のための精強な軍事力の保有展開を、軍事力の戦争抑止力というが、それは「戦争をするぞ!痛い目にあわせるぞ!」によって侵略予備国をして侵略(戦争)をdissuadeまたはdeterすることを指す。

 外交の最高目的が平和であるならば、それは軍事力の抑止をより確実なものにすることであって、これ以上に確かな平和の方法を人類は知らない。ならば、日本がミストラル級強襲揚陸艦二隻を買う外交は、ロシア海軍の黒海からのウクライナ侵略を未然に防ぎ、またロシアの北海道への侵攻を未然に防いで、日本とウクライナ両国の国防に寄与するのだから、それこそ“国防(軍事)と一体不離の外交”にほかならない。

 とりわけロシアは、軍事力を強化する隣国に対してのみ、侵略を自制する。隣国ロシアとの平和共存は、ロシア以上の強力な軍事力を保有することが最良の方策。それ以外は存在しない。またロシアとの軍事力バランスは相対であるため、ロシア側の強化を妨害し、日本の強化を促進すれば済む。難しいことは何もない。ミストラル級強襲揚陸艦二隻のフランスからの緊急購入こそ、日本が世界平和と自国の国防に義務を果す正常な国家に脱皮する第一歩となるのは、かくも明白。

シリア介入に怖気づいた“口先男”オバマ大統領、“海外営業マン(トップ・セールス)”を外交だと勘違いする“お喋り幼児”安倍晋三 ──ロシアの増長とウクライナ侵略は、オバマと安倍の対プーチン宥和のツケ!

 新ロシア帝国の独裁者プーチンがウクライナ侵略を決断したのは(二〇一四年二月)、シリアの化学兵器使用に対する米国オバマ大統領の異常かつ暗愚きわまる行動が決定的な遠因となったとするのは、今では世界の通説。

 第一に、二〇一三年八月の、尻切れトンボのごとくに世界に発した公約や公言を平然と翻す、オバマが自分の言葉に責任をとらない無責任言動。第二に、この国際的に重大深刻な大事件の処理を、あろうことかシリア化学兵器の製造と輸出をした共犯者ロシアに丸投げして(二〇一三年八月)、オバマが腰抜け以上の対ロ宥和に舵を切ったこと。

 シリアは、ロシアから輸入した化学兵器サリン(神経ガス)を、二〇一三年八月、反体制派の占拠する町(首都ダマスカス郊外)にロケット弾で撃ち込んだ。死者は、一四二九名、うち子供が四二六名との調査結果もある。オバマは、化学兵器使用は許せないと、地中海に米海軍の艦艇を集結させておきながら、軍事制裁(アサド大統領政権の崩壊)がうまくいかない場合を想定して勝手に慄き、世界にいったん公約した軍事制裁をいきなり投げ出した。正しい公憤も、表に出した以上は、処罰の行動なしにはヤブヘビになる。

 しかもこのとき、この化学兵器がメード・イン・ロシアであるのがばれるのを避け、親ロ一辺倒のアサド独裁政権を援けるべく、プーチン大統領はタイムリーにシリア化学兵器の国際管理を提案し、実際に「化学兵器禁止国際機関 OPCW」は、隠しているのを除き、シリアの化学兵器を国外に撤去搬出した(二〇一四年七月現在)

 だが、これによって、アサド大統領の化学兵器使用の罪は免除されてその政権基盤は逆に強化され、また隠匿に成功したかなりの化学兵器をいつでも使用できるという軍事情況が形成された。そればかりか、プーチン大統領は、「オバマという大統領が、米国史上、カーターと並ぶ、極めて稀な<暗愚><弱腰>大統領である」と喝破した。プーチンの増長は、ここに始まった。

 そして、シリアのアサド大統領に敗北した“アメリカの負け犬”オバマに対して、「ウクライナをもらうが了解せよ」と迫ることを決意した。チェコのズデーテン地方の割譲に同意した英国チェンバレンに対して、「ポーランドをもらうが、了解せよ」と迫ったヒトラーと同じやり方である。ロシア人は、一つ妥協した他国・他民族に対して、第二、第三の妥協を要求するが、ロシア民族のこの特性を絵に描いたような行動である。 このような“公言引っ込め”大統領オバマにそっくりな、“滑舌芸人”政治家が世界にもう一人いる。安倍晋三である。

 プーチンは何一つ言質を与えていないのに、「オレと馬が合うから」だけを根拠に、プーチンは北方領土を返還してくれると無根拠の妄想を弄ぶ幼児総理、それが安倍晋三の真像。しかも、安倍は、神戸製鋼NY支社の営業専門社員としては水準並みの成績を持つ男で、現在世界を飛び回る時に輸出拡大を狙う産業界の社長を大量につれて歩くように、彼の国際感覚は一国の宰相のそれではなく、私企業の海外営業マンのそれ。  

 つまり、安倍は、営業マン総理としてトップ・セールスにはそれなりの実績をもつが、このことが逆に“外交と営業マンの区別がつかない”変な日本の総理になった。だから、“外交とは国防と不離一体”という高邁な“王道の外交”から脱線して恥じることも反省することもない。現在、世界は、プーチンのやりたい放題という秩序崩壊の状況になったが、この責任の一半は、“弱腰”オバマと“プーチンの犬”安倍晋三の二人にある。

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