筑波大学名誉教授 中 川 八 洋
本稿では、2016年11月19日ペルー・リマで、安倍晋三がプーチンに発した“恐るべき発言”を考察する。秘匿されていた「11・19」会談内容をマスメディアが完全掌握した12月末にすぐ上梓すべき稿だから、丸二カ月も遅れたことになる。最初に、この遅れを読者に詫びておきたい。
プーチンの初本音は2016年11月19日。(2013年4月から)三年半も騙された“悪餓鬼”安倍晋三
2016年11月19日、プーチンとの会談を終えた安倍晋三の記者会見に、いつもの饒舌は全く無く、やつれ顔が余りにひどいのにテレビ視聴していた多くの日本人が驚いた。この安倍晋三の憔悴は、プーチンが、それまで三年間半も被っていた羊の仮面をこの日にかなぐり捨てたからだ。無数の政敵や邪魔者を殺しまくる“殺人(テロリズム)が日常”のプーチンが、本性の狼面を安倍に見せたからだ。
2013年4月からこの日までの三年半、安倍晋三の耳元や鼻先で漂わせ嗅がせてきた“友好の煙”「歯舞・色丹だけぐらいは返還してあげよう」を、2013年年頭の森喜朗の訪ロで周到にプランしたアジェンダ通りに2016年11月19日、「破棄し撤回する」と通告した。そして、「来月の12月15日に訪日してやる代わりに”領土無し“が交換条件だ」と、プーチンはリマで安倍晋三を恫喝した。
安倍晋三は、プーチンの怖さを知らないし、知ろうとはしなかった。アホ馬鹿丸出しなのに“異常な自惚れ屋”安倍に付ける薬は無い。プーチンは、KGB第二総局という国民弾圧機構出身のスーパー政治エリート。その殺しと“騙し力”は、世界史に残る凄腕の超一流。
真偽の確定はともかく世界では本当だと信じられている事件をいくつか挙げる。親西欧主義のサプチャークはプーチンに毒殺され(2000年2月20日)、ポリトコフスカヤとネムチョフはプーチンに銃殺され(各2006年、2015年)、リトビネンコはプーチンにポロニウムで毒殺された(2006年11月)。プーチンに楯突いた経済人ベレゾフスキーは英国への亡命を余儀なくされ、同じく経済人ホドルコフスキーは八年間の刑務所暮らしのあと2013年にやっとドイツに亡命できた(注1)。
批判や敵対する者、用無しとなったかつての仲間など、自分に不都合な人物は容赦なく殺す、そんな殺人常習のプーチンにとって、外交交渉と個人的雑談の差異すら理解できない文字通りの“スーパーお馬鹿”安倍晋三を、また(国益や国土など全く考えない)自分の政治家人気だけしか頭にない愛国心ゼロの「民族系」安倍晋三を、さらに国際法と軍事知識を持たないゲス人間の安倍晋三を、騙すことなどいとも容易いこと。
なお、プーチンは、レニングラード大学法学部卒で国際法を専攻した目立つほどの大秀才。ためにロシアでトップ秀才しか入省できないKGB第二総局に抜擢された。また、国挙げて軍事一色のロシアでは軍事知識や国防意識のないものは下等人種として軽蔑される。どの大学にも、軍事教練の選択科目がある。
話を戻す。思い出してみよ、プーチンは2013年春、「国後・択捉の返還はしない」と明言しつつ、「歯舞・色丹の返還はある」の“煙”を安倍に吹きかけた。しかし、愛国心も領土意識もゼロの“安倍家売国奴三代目”の安倍晋三は、プーチンに向かって、「国後・択捉の返還が無ければ、対ロ交渉など絶対にダメ」とは一言も主張しなかった。
そして、国後・択捉島の放棄である「歯舞・色丹だけの返還」という“煙”にダボハゼが毛鉤に喰らいつくように喰らいついた。要するに、2013年初頭から、プーチンのロシア側には北方領土を返還する意図は全く無かった上に、安倍晋三の売国奴丸出しの言動から、「歯舞・色丹の返還」の“煙”だけで日本からたんまり経済協力をせしめることができると、“世界一の大悪党”プーチンは確信した。
が、三歳幼児レベルの甘えでプーチンを母親だと錯覚してべたべたするばかりの安倍晋三は、「国後・択捉などロシアに呉れてやれ」「歯舞・色丹が返還されるなら、それで十分だ」と、勝手にそう妄想し、勝手にそう信じた。“自己チュー男”に特有な“自惚れ妄想”症である。
日本の主権や領土をこれほど毀損する安倍晋三とは、北洋漁業での魚の代わりに北方領土をロシアに貢いだ“1956年の河野一郎”のまさしくクローン。総理大臣の地位にある政治家で、安倍晋三ほどの祖国叛逆者は、戦後政治史上、類例がない。
「11・19恫喝」に安倍晋三は逆さにも、プーチンに土下座し“貴方の奴隷になる”と誓約した
プーチンは、安倍晋三に、リマでにやりと笑いながらこう切り出した。「君の側近・谷内正太郎が、《ロシアがもし歯舞・色丹を返還した場合、米軍基地がおかれる可能性はある》と言ったそうだが、それでは、交渉は終わる」と(注2、備考)。だが安倍が、「国際法の法理において当たり前のこと」「しかし現実には、そんな小島に、日本の自衛隊も米国も基地をつくるほど馬鹿ではない」「変な言いがかりを止せ」と全面反駁せずに、訳の分からぬヒステリ―語を発したことで、急転直下、安倍晋三は文字通りの“プーチンの奴隷”になってしまった。
安倍晋三は、日本国が主権国家であることを忘れた。信じられない事だが、安倍はこういったのである。「それは全くの誤解だ」(注2)、と。この言葉が、「僕はあなたの言いなりしかしませんよ。だから誤解してますよ」という意味だから、間接的に「日本はロシアの属国ですから、そんなことは致しません」と言ったに等しい。
だが、成蹊大学卒のスーパーお馬鹿の安倍には、自分の発した周章狼狽語のニュアンスすらわからない。「日本の主権下の領土を日本がどう活用しようと日本の主権事項である。それともロシアは主権侵害と内政干渉をする積りか」と反論すれば、プーチンは引っ込むしかない。が、安倍晋三の“お馬鹿”頭では、国際法もわからない、主権とは何かもわからない、内政干渉もわからない、さらに相手の心理すら読むこともできない。
なお、外交交渉は相手の心理を読みながらするものだが、それには特段の知能指数がいる。ただの東大卒ぐらいではダメ。最低でも「東大上位1%以内卒」でないと無理。
(備考) 谷内正太郎は、2016年11月上旬、モスクワでパトルシェフ安全保障会議書記の質問に対して、不用意にも「その可能性はある」と回答した。この回答自体は、現実的にも大間違い。あり得ないからだ。択捉島ならまだしも、歯舞・色丹のような小島に基地をつくる馬鹿はいない。
しかも谷内は、「この質問は、プーチンが歯舞・色丹の返還もしない口実にする気だな」と簡単に察知できるのに察知しなかった。谷内が日頃から「北方領土などどうでもいい。俺には関係がない」と投げやりな北朝鮮人だからである。
ロシアと交渉する場合、ロシアは最後の段階でドンデン返しをするから、12月15日が近づいた以上、口にはチャックをして「聞くだけで何も語らない」原則を守るのが基本。この場合は、「リマで安倍総理が回答するだろう」と答えるのが正解。が谷内は、“ロシア知らず/軍事知らず”の凡庸な極左外交官の出。対ロ外交に最も不適切な男。
安倍晋三が「完全ロシア人=非・日本国民」に洗脳・改造された“プーチンと二人きり密談の魔”
リマ秘密会談の冒頭における、先述のプーチンの一撃を喰らって安倍晋三は周章狼狽。その後は、プーチンの蜘蛛の巣にがんじがらめになり、「プーチン様に、これからはもっと言いなりになりますから、どうか交渉打ち切りをしないで下さい。訪日をキャンセルしないで下さい」と、プーチンに泣きつく有様。
そもそも、ロシアと秘密会談して得するのはロシアのみ。秘密会談をやれば、日本は一方的に大敗北的に国益を侵害され続けるだけ。だが、安倍晋三は、「民族系」だから心底に日本憎悪が潜んでいる。だから安倍晋三は、日本国のロシア属国化を推進すべく、禁じ手の秘密会談をプーチン(ロシア)と16回も行ったのである。
「民族系」とは、日本会議や靖国神社の宮司が典型だが、自国日本を徹底的に毀損し破壊する究極のアナーキズムに犯された“日の丸大好きの逆立ち対ロ売国”が本性の畸形イデオロギー集団。河上肇/野坂参三を信奉するコミュニスト家系の安倍家三代目の晋三がいとも簡単に「民族系」となったのは、日本国のロシア属国化という共通項において、コミンテルンの日本共産党と「民族系」とが、同じ思想の母胎から生まれた“血(思想)を分けた兄弟”だからである。
ところで、対ロ外交で絶対遵守すべき鉄則のもう一つは、安倍晋三のような密談を断じてしないこととも関係するが(備考)、「ロシアとは何か」を日本国民広くに教育宣伝的に知らせることである。また、有識ある国民に示唆して「北方領土の無条件即時返還」運動を大々的に繰り広げることである。根室市その他に、その母体となる団体はいくらでも存在している。
(備考)安倍晋三は、禁じ手の密談をプーチンと16回もやったが、それほど秘密裡に事を進めたいのであれば、あのド派手な森喜朗「特使」派遣と矛盾する。安倍晋三の思考や人格には医学的に正常ではない部分が顕著に散見される。
前者の「ロシアとは何か」については、対ロ交渉中の刻々の外交情報は機密であり国民に開示できないが、過去の歴史的事例、例えば、「鳩山一郎の対ロ外交交渉大敗北はなぜ起きたか」等の学術的シンポジウムなどを全国で無数に開催して、日本国民に“侵略文化のロシア”を知らしめ、対ロ外交交渉の困難性を啓蒙し、国民挙げて一丸となろうとアッピールすることは、ロシアへの大きな圧力となるのだから、安倍晋三のこの等閑視は、烏滸の沙汰の極み。
対ロ交渉の場合、政治家は事前に日本国民に「交渉決裂や手ぶら結末が有る」と広く周知すること
日本の政治家は、仮に(私や吉田茂や曽野明の“無交渉”主義をせせら笑って無視して)愚かにもロシアと交渉するなら、四つの鉄則を守らねばならない。第一は、国際法を絶対規範として正論のみしか語らないこと。第二は軍事的観点を最重要視すること。第三は、もし無理難題を吹っ掛けられたら、断固として“ノー(ニエット)”と大声で言い、部屋から飛び出しドアをバタンと音をたてて閉めること。
この三番目について多少説明すると、ロシア人は、民族文化として背中を向けられると落ち込む性質があり、ほとんどのケース、必ず妥協を提案してくる。
第四は、交渉決裂や手ぶら結末となることがあると、事前に国民に広く周知して、交渉に臨むこと。戦後日本の政治家は、交渉決裂や手ぶら結末を回避することを最優先して、当初予定の対ロ要求をことごとく放棄しても“恥じない/良心の呵責がない”のが常である。日本の政治家は自らの保身と人気を、国家や国益よりも絶対優先する。「政治家あって、国家なし」が、戦後日本の惨たる現実である。現に今や、日本の国会議員で愛国心を持つ者はゼロ。安倍晋三は、その一人。
ロシアは、戦後日本の政治家の「交渉決裂や手ぶら結末の回避の方を優先する祖国叛逆癖」を徹底的に悪用し、彼らを追い詰めることに一貫して成功してきた。だから、鳩山一郎にしても田中角栄にしても、譲歩、譲歩、譲歩の、対ロ譲歩スパイラルに陥ってしまった。この中でも特にひどいのが、江戸時代を含めて“日本史上最悪最凶の対ロ売国奴”の安倍晋三。安倍のなしたプーチンとの約定は、鳩山一郎の対ロ大敗北より百倍も千倍もひどく、日本は完全にロシアの属国となった。日本は、ロシアに無料で収奪される(奴隷以下の)乳牛に成り下がった。
朝日新聞と産経新聞と読売新聞は、KGB東京支所の監督下で発行するロスケ編集のロシア新聞
日本には、ロシアの支配を受けていない、ロシアから独立した新聞は無い。とりわけ、朝日新聞と産経新聞と読売新聞は、事実上のKGB東京支所が発行する、ロスケ(日本人KGB作員)が書くロシア新聞である。この端的な例の一つが、プーチンの来日前日の12月14日付けで、プーチンの言い分を、一面だけでなく、何面も用いて大々的に報道して、日本人をロシア側に洗脳した読売新聞(注3)。
日本人が手にするロシア情報は、日本国民の手になるものは実はゼロ。全てがモスクワKGB第一総局から与えられたもの。簡単に言えば、日本には「日本人による、日本人のための新聞」は一つもない。だから日本の新聞は、プーチンがさも我が国が奉戴する独裁皇帝であるかに、ロシア側の言いたい放題の言い分を、そのまま大きく扱うのである。日本とはロシアの属国である。このことを、12月14日付け読売新聞は、露骨なほど鮮明にしてくれた。KGB第一総局所属の編集局長や幹部が支配する読売新聞もまた、朝日新聞に劣らぬ対ロ売国新聞で、非・日本の新聞である。
12月7日のクレムリンで、読売新聞社(東京本社編集局長)と日本テレビのインタヴューに、プーチンは公然と傲然と、次の様に語った。どう読んでも、プーチンは日本を「主権ある外国」には見做しておらず、戦前の「宗主国・英国が植民地・インドに対する上下関係」における語り口。実際プーチンは、日本と安倍晋三に対して命令口調で、語っているのではなく、命令しているのである。
第一;日本が、北方領土返還問題を提起することは許されない。
第二;日本が、「北方領土は要らない」と放棄し、どうしても「平和条約だけは欲しい」とねだるならば、北方領土への共同経済協力をしろ。そしたら、平和条約ぐらいは締結してやろう。但し、この共同経済活動は、北方領土がロシアの主権下にある法的立場を万が一にも害してはならぬ。
第三;ロシアがクリミヤ半島に侵略したからと言って、ロシアに対して、属国の日本が経済制裁を課すなどとんでもない。平和条約が欲しければ、経済制裁を直ちにやめろ!そしたら、平和条約の話ぐらいには応じてやろう。
プーチンの暴言・放言をそのまま最高の扱いで報じた読売新聞のこの記事を、私は健全な日本人だから、すぐには読む気力がなかった。新聞そのものを正視できなかったからだ。学者の仕事だからと自分に言い聞かせ自分に無理強いして読んだが、これを嘔吐を催さずに読んだ日本人とは、正確には読めない学歴無き無教養人でなければ、まともでない非国民と言うこと。インタヴューで語るプーチンの語気には、日本人を「“ロシアの奴隷”のくせに」と、上から蔑む奴隷視がありありではないか。
だが、安倍晋三という対ロ売国奴によって、日本が北方領土をロシアに割譲する寸前となった現状が、戦慄をもって伝ってくる。日本はすでに、安倍晋三によって、国家の主権をロシアに簒奪される方向に誘導されてしまった。日本人は、悪魔のハーメルンの笛を吹く安倍晋三が総理職にある事態の深刻な危険を察知せず、国の亡びを感じないほど人間として劣化して腐敗の度をひどくしている。
なお、上記プーチン三項目にあるように、安倍晋三のような日ロ平和条約の締結を望む「反日」転倒思考がますます日本の主権と安全とを遠ざけている。「対ロ無交渉・無条約主義こそ日本の平和」という最高の常識に立脚した吉田茂や私の主義・立場だけが日本の国益を守る。上記プーチン三項目は、この反面教師になっている。このことを、良心ある日本人は拳々服膺することだ。
日本の絶対国益である対ロ無条約主義に違背して締結された日ソ中立条約によって、日本人男児60万人がシベリアで虐殺され、日本人婦女子20万~25万人が満洲でレイプされ餓死した悪夢の歴史体験を無にしてはならない。日本が、1956年の日ソ共同宣言を破棄し、無交渉・無条約を旗幟鮮明にして対ロ糾弾の声をあげ、加えて北海道を全道要塞化すれば、ロシアは北方領土全島を無条件で即時に返還する。ロシアは条約や話し合いでは侵略領土を返還しない。ロシアは領土を返還する時、撤兵の形で、黙ってそれをする。
北方領土のロシア軍隊の即時撤兵をプーチンに要求しなかった“安倍晋三の対ロ売国奴ぶり”
安倍晋三の対ロ売国奴ぶりは、「国後・択捉を返還せよ」とプーチンに迫ることが、ここ三年半もありながら一度もなかった事で、十全に証明されていよう。いや、それ以上に、「北方領土のロシアの軍隊はすべて即時撤退せよ」の抗議も要求も一言も発しなかったことで充分に歴然。
現在、国後・択捉島には、砲兵と歩兵が主なロシア陸軍(地上軍)一ヶ師団が駐留するが、これに加えて、対米戦争の準備を開始した。例えば、2016年11月、わざわざ長門でのプーチン・安倍首脳会談の直前に、択捉島には地対艦ミサイル「バスチオン P-800」(射程300㎞の超音速巡航ミサイル)を、国後島には地対艦ミサイル「バル 3K60」(射程130㎞の巡航ミサイル)を配備した。
このように、プーチン時代になってから、ロシアの北方領土の軍事化・要塞化は、過激に進められている。それは、プーチンが北海道への侵略を日程表に書き込んだ証拠でもある。米国は日米安保条約に基づき参戦せざるをえず、北海道を巡る米ロ戦争はそう遠くはなく、バスチオンもバルも、参戦する米国艦船への攻撃兵器である。
この日本の国防上の由々しき問題はさておき、国際法上から言えば、この急ピッチの軍事化は、北方領土がロシアの主権下の領土だということの内外への決定的なアッピールにもなっている。即ち、この北方領土への軍事力強化に対して日本が抗議しなかったら、それは、国際法上、択捉・国後はロシア領だと認め、日本がロシアに割譲した行為とみなされる。
だが驚くなかれ、安倍晋三は、11月19日のリマでも12月15日の長門でも、このバスチオンやバルの配備に関し、プーチンに対して一言の抗議もしなかった。安倍晋三の対プーチン無言は、北方領土をロシアに割譲すると内外に闡明したのと同じである。安倍晋三のような度し難い対ロ売国奴が、日本国に生きていることを、真正の日本国民なら許さないはず。
侵略しか頭にない「軍事大国ロシア」、外国を騙し一気に乳牛化する能力をもつ「謀略超大国ロシア」
対ロ交渉など決してしてはならないが、そのような危険な外交を仮に選択する場合、いかなる政治家も絶対に守るべきものがある。両脇に、ロシアとの係争に精通した国際法の専門家とロシアの軍事侵略史と兵器に精通した国防の専門家を、片時も離してはならず、両名を自分の体に縄で結びつけておくことだ。
前者の例を挙げれば、田村幸策(外務省条約局長→中央大学教授)のレベルのもの。後者の例を挙げれば栗栖弘臣(東大法学部→帝国陸軍→自衛隊→統幕議長)のレベルのもの。ロシアの対外部門は、国際法の裏を掻く国際法知見と将来の軍事的侵略を前提とした軍事的知見を徹底的に叩き込まれる。また、各国別に謀略専門家の大部隊がおり、プーチンは、これらの恐ろしい対日攻略官僚群を脇において安倍晋三との16回の首脳会談に臨んだのである。
だが、驚くことに、安倍晋三は、自分の周辺に対ロ攻勢部隊が全く存在しない、自分が裸の王様である情況を気にかけたことが一度もなかった。自分が“知”において丸裸だから、プーチンの方もそうのはずと勝手に思い込んでいた。譬えるならば、プーチンが戦車300両で攻めてきた戦場で、たった一人素手で闘いに挑んだのが、三歳児レベルの“白痴の幼児”安倍晋三である。
知とIQで彼我の格差が天と地である場合、そんな者同士の交渉では、12月15/16日の対プーチン会談の結末が示したように、安倍晋三が一方的に八つ裂きにされるどころか、肉片一つとして無き死を迎えるのは分りきったこと。が、無学・無教養なのに滑舌だけを特技として総理になった“お馬鹿”安倍晋三は、この分りきったことすら自覚できない。
プーチンのロシアとは、八百年前の十三世紀のモンゴル帝国の雰囲気を漂わせる軍事一色の軍事国家であり、対外謀略一色の謀略国家である。この時代錯誤的な、十三世紀のユーラシア大陸を専門とする歴史博物館から生き返ったようなロシアについて、前者については小泉悠氏の『軍事大国ロシア』(注4)が参考になろう。後者については、日本ただ一人の専門家である私が『謀略超大国ロシア』を上梓すべき義務があるのは自覚しているのだが、時間がなく、未だに出版していないことを愧じている。
ともあれ、この小泉氏の本も読まずにロシアと北方領土交渉する“お馬鹿”を、“お馬鹿”で済ましてはならない。安倍晋三の“大犯罪”対ロ売国に目をつぶることは、日本の領土をロシアが次々に簒奪するのを幇助する犯罪者になるに等しい。
鳩山一郎がロシアに翻弄された「北方領土・択捉島の米軍基地」問題を研究しなかった安倍晋三
さて、プーチンは部下に命じて、谷内正太郎(内閣府のNSC局長)に、歯舞・色丹に米軍基地をつくるかと質問させた。北海道には、樺太のロシア空軍基地からの距離が近過ぎて防御できないから米軍基地は無い。況や、ロシアの空軍基地がある択捉島の近接小島に、基地や駐屯地をつくる馬鹿はいない。
在日米軍の対ロ戦線の最北端は、青森県の三沢基地である。樺太のロシア空軍基地との距離(縦深)から定まっている。択捉島からの距離において、また島の大きさにおいて、谷内の回答「可能性がある」は、真赤な嘘。どうも谷内は、事前にロシア側と謀議して八百長発言をした可能性がある。谷内正太郎は北朝鮮人でロシア工作員。プーチンが歯舞・色丹すら返還しないで済むよう、日本を謀ったとしてもおかしくない。
それはともかく、北方領土返還問題は、軍事問題と切り離すことはできない。歯舞・色丹ではなく、返還が国後・択捉であれば、自衛隊が基地を置くのは間違いない。米軍の海洋戦略にとって、択捉海峡の自由航行は、死活的に必要。しかし、北方領土問題が日本の国防や米軍の作戦と不可分の関係にある常識も、この常識に関連した最小限の軍事的知見も、外務省からすっかり消えた。これでは対ロ交渉は、からきし不可能にならざるを得ない。
また、北方領土交渉をするなら、ロシアの出方の基本を把握できる最良の教科書・松本俊一著『モスクワにかける虹』(注5)を丸暗記しておくことが最低限必要。だが驚くなかれ、安倍晋三は、この著を読んでいない。無学・無教養のならず者だから読めないのかも知れない。
ロシアが、北方領土の返還に関して、必ず日米安保条約問題と米軍基地問題を持ちだすのは、この本を読んでいれば、予測できる。予測できなければ安倍のように準備もしない。すなわち、安倍晋三が、松本俊一著『モスクワにかける虹』(注5)を、丸暗記はともかく一読さえしていれば、さまざまな想定問答を外務省担当官に作成させうるから、あの総理失格の安倍晋三「11・19」周章狼狽事件は万が一にも起きなかった。
なお、私事だが、私は北方領土問題を平均数年おきに取り組んできたが、その研究や論評を再開する度に必ず松本俊一著『モスクワにかける虹』を読み返すことにしている。
『モスクワにかける虹』は、ロシア側の方から、「歯舞・色丹は、無条件で返還しましょう」と提案してきたと記している(51頁、1955年8月30日、第13回会談)。プーチンが安倍に、2013~4年、耳元に囁いたのとまったく同じ。次に、それから二週間後の9月6日(第14回会談)で、「歯舞・色丹の返還は、無条件ではなく、軍事基地を置かない非武装化を条件としたい」(52頁)に変った、と記している。これも「11・19」のプーチン行動にそっくりである。
歯舞・色丹に軍事基地を置く馬鹿はいないから、この条件なら日本側は即座に飲めばいい。だが、そうすると択捉島の返還の場合に悪影響が及ぶ。日本は北海道を防衛するに、択捉島の奪還が絶対に必要である。つまり、択捉島をロシアから奪還すれば、日本は、海自が単冠湾に基地を、空自は防空戦闘機部隊の基地を設置する。日本が北方領土を奪還するのは主権回復行為として当然なすべきものだが、もう一つ北海道防衛に是が非でも緊要だからだ。
択捉島への自衛隊進駐の国防問題と択捉島を奪還する外交問題のリンケージについての分析は、読者の頭が混乱するので、ここでは割愛する。代わりに、私の動画「“侵略の皇帝”プーチンに領土を貢ぐ安倍総理」を必ず視聴しておいて欲しい。
対ロ売国奴養成所の日本会議が証明する「大東亜戦争肯定論は、“ロシア対日侵略”熱烈歓迎論」
何でもかんでも大東亜戦争を絶賛・崇拝するファナティックな「民族系」は、ことロシアとなると沈黙する。論理的にも、そうなるからで、不思議なことではない。大東亜戦争とは、スターリンのロシアが日本に対して、アジアと日本の共産化のための革命戦争として命じたもの。つまり、大東亜戦争肯定論とは、日本が“スターリンのロシア”を宗主国として奉戴し、自らは“ロシアの属国”となった歴史を「大愚行」とはせず、その逆に「日本が当然に選択すべき正しい国策」と断じるものである。「日本国の領土も日本の経済力も日本国民の生命もロシアに捧げます」という狂気のイデオロギー、それが大東亜戦争肯定論の骨子である。
このような歴史学的考察をせずとも、大東亜戦争を肯定すれば、ソ連軍の満洲侵略も南樺太侵略も正しいと肯定することになることぐらい、小学生でもわかること。また、シベリアに日本人男児107万人を拉致連行して強制労働させ、うち半分以上を殺戮したロシアの大蛮行を肯定することになることも明らか。大東亜戦争論とは、一言で言えば、「ロシアの対日侵略肯定論」。大東亜戦争肯定論者を一人残らずシベリアに追放しなければ、日本は“国家”を取り戻すことができない。
私が東大三年次の1965年、番町書房から林房雄の『大東亜戦争肯定論』が出版された。『朝日新聞』『中央公論』『世界』の大応援をいいことに、共産党と社会党が繰り出す「憲法第九条改正反対!」運動に怒り心頭だった私は、これこそは彼らに一撃を喰らわせる特効薬かも知れないと、いそいそと購入し読んだ。が、逆だった。目の玉が飛び出すほど驚愕し、投げ捨てた。林房雄『大東亜戦争肯定論』は、日本亡国待望論。新種の「反日」アナーキズムだった。
1965年の時点、国民の六割は、ポツダム宣言を受諾され大東亜戦争を否定された昭和天皇と共にあることを至上の幸福と感激する「保守」であった。つまり、当時の日本人の六割は、当然、大東亜戦争否定論だった。共産党と社会党が大声で叫ぶ大東亜戦争侵略論とは、別次元のものとするのが、「保守」の常識だった。侵略論も排斥するが、侵略論に対する“対置概念”自衛論にも与しないのが、「保守」だった。
「保守」知識人の竹山道雄/林健太郎/福田恒存/磯田光一はむろん、ジャーナリストの池島信平/長谷川才次などや吉田茂/岸信介らの政治家を含め、大東亜戦争否定論だった多数派の国民は、林房雄の「肯定論」に奇矯さを感じ嫌悪した。が、これが二十年後に、「民族系」が台頭する土壌になるとは、(1965年時点の私は)予測できなかった。現実に1984~5年の頃から、大東亜戦争肯定論の「民族系」が台頭し、「保守」の地位を簒奪した。
私は、“保守潰し”の「民族系」の新奇な動向が、理論的に、日本に“ロシアの犬”を増殖させるだけでなく、国論を対ロ属国主義の『朝日新聞』論調にシンクロさせ、「一億総“ロシアの犬”化」を起こさせるだろうと、危機感を感得した。国を守るための私の「民族系」危険視は、1984年に始まった。
現に、2016年12月16日、北方領土の主権をロシアに明快に譲渡した“世紀の対ロ売国奴”安倍晋三に対し、日本では、当然起きてしかるべき囂々たる非難は全くのゼロだった。日本会議は沈黙に徹した。形だけの非難すら日本のどこからも起きなかった。日本国から「保守」が完全死滅したが故に生じる、当然の怖ろしい光景である。
日頃、「反・左翼」かに演技をする日本会議を始めとする「民族系」は、朝日新聞と完全にグルになって、安倍晋三の史上空前の対ロ売国行為を間接支持した。日本会議は、「日本“対ロ売国”会議」と正しい名前に改名しなければならない。
(2017年2月18日記)
注
1、マーシャ・ゲッセン『プーチンの極秘指令 そいつを黙らせろ』、柏書房。アルカディ・ワクスベ ルグ『毒殺 暗殺国家ロシアの真実』、柏書房。などを参照されたい。
2、『朝日新聞』2016年12月26日付け。
3、『読売新聞』2016年12月14日付け。
4、小泉悠『軍事大国ロシア』、作品社。
5、松本俊一『モスクワにかける虹』、朝日新聞社、頁数は文中。