筑波大学名誉教授 中 川 八 洋
現在、一億日本人は、二つの重大な誤認と錯覚に陥っている。第一は、双頭の蛇のごとくに“分裂する二重思想”高市早苗という稀有な人格を直視していないこと。高市早苗とは、その六割は愛国心が漲る保守だが、残る四割はスターリンやヒトラー系の極左。このような二重思想は、自民党幹部の過半を占める本性が極左の《偽装保守》とは異質。一言でいえば、極めて珍しい。
一億日本人の重大な誤認と錯覚の第二は、「自民党は保守」だと思い込んでいること。ほとんどが保守だった1960年代の自民党議員を基準にすると、現在の自民党は、1960年代の社会党・共産党議員と差異がなく、完全に社共化=極左化した。例えば、天皇制度護持の正しい精神と知見双方を有する自民党議員は今では一人もいない。知見は問わないことにし、「天皇制度を維持せねば」の精神があれば“良し”としても、これに合格するのは麻生太郎と有村治子ら数名がやっと。
スターリン計画経済の信奉者・高市は唯物論の刹那主義。歴史&伝統を紡ぐ皇統“憎悪”は必然
日本国は今、阿鼻叫喚の経済破綻という近未来に向かって確度百%で崩落している。日本国民の貧困化は今後スピードを上げていき、今の数倍以上に悪化する。
新生児数は、日本が右肩上がりの経済発展に必要な年170万人からほど遠く、日本民族は絶滅に向かっている。また、経済発展を牽引する市場と勤勉は、過剰な社会保障制度=超福祉国家の政策によって縮小と減退を加速している。日本経済の破滅的な終焉は、もはや不可逆。
が、精神病院を脱走中の妄想に浮遊する高市早苗には、「新生児数、市場、勤勉」のワードがない。また、経済発展を牽引する技術革新に必要な博士課程の理工系学生の増大という教育制度の抜本的な改善に、高市は何ら関心がない。無知蒙昧な高市は、経産省がやっているいくつかの政府投資を促進すれば、経済など一気に鰻登りになると、自分が放つ“逆さ妄想”「強い経済が創れる」に酔い痴れている。
そればかりか、それいけどんどんのバラマキ福祉とその財源を国債垂れ流し=子孫への大課税に求める“反・財政の極み”「積極財政」をすれば、いずれ国民は貧困に呻吟し経済は破綻する。なのに、“狂人”高市早苗は、この逆になると妄想する。これ、スターリンの計画経済の亡霊の信仰。高市は、ケインズ経済というよりマルクス経済学を信奉する百年前のレーニン/スターリンの化石である。
即ち、高市には、祖先が数百年かけた“意識せざる行為”の積み重ねで自生した市場という経済発展の唯一のメカニズム=自生的秩序が見えない。経済発展の法則は、一言でいえば「コークの“法の支配”+マンドヴィル=ハイエク/ミーゼス/レプケ」だが、高市早苗はこれと対極にある。
このようにスターリンや北朝鮮の市場無き経済体制を理想とする高市だから、サッチャー英国首相やミレイ大統領(アルゼンチン)とは正反対の経済政策になるのは必然。高市総理が続く限り、日本経済は、破滅的な崩落の坂道を転がり落ちていく。
高市が、市場を排除し計画経済を信奉するのは、祖先を無視し子孫を虐待する現世代“唯我独尊”主義に犯されているからだ。実際にも高市早苗の頭には、祖先が存在しないし子孫が消滅している。市場経済の尊重はハイエクやミーゼスのように祖先の行為への崇敬を基盤として発生する。経済のための国債発行に(佐藤栄作首相のごとく)強い嫌悪感を抱くのは、子孫に借金を残してはならぬという現世代(親世代)の責務自覚から生まれている。
が、これらと真逆の高市早苗は、総理になるや補正予算で11兆円の国債を新規発行し、続く2027年度予算でも34兆円の国債を発行した。総理就任から半年で計45兆円を子孫に払えと強制借金を負わせた。日本は古来から二千年にわたり、租税は(人類史上最も軽い)収穫物・所得の三割を超えないことを国是とした。仁徳天皇は三年間だけだが、この三割の租税すら徴収しなかった。
高市早苗は、彼女の著『30歳のバースディ』で明らかだが、唯物論の“Body & Sex狂”の刹那的な快楽主義者。高市の国民誑かし言説「強い日本経済」は、子孫虐待・日本民族“絶滅”を目的とした(無意識かも知れないが)屁理屈であり詭弁に過ぎない。
高市のような「祖先が存在しない/子孫が存在しない」刹那主義者は、経済の分野では必ず計画経済を指向する。同様に、「祖先が存在しない/子孫が存在しない」刹那主義者は、天皇制度の分野では皇統の絶滅を指向する。高市の信条は天皇制廃止。論理的には、これは至極当然。
高市とは百八十度逆に、皇統死守の思想と精神は、祖先への限りなき尊崇と子孫への限りなき義務意識を基盤として咲く大輪の菊の花。バークや私など自由世界の王制主義者に共通するのは、祖先が王制を奉戴した通りに現世代もそれを踏襲し、自分の精神と行動とを祖先と一体化すべきと考える思惟。伝統・慣習を育む過程で道徳的な自由と国を形成した偉大な祖先との一体化を通じてしか、自国を美徳が咲き誇る自由な国にすることはできないことを知るからである。
高市は国防問題では愛国心が漲って日本国の安全に大いに裨益している。が、こと経済財政や皇室問題になるや、スターリンの計画経済や「(日本に天皇制廃止を命じた)スターリン32年テーゼ」を前面に打ち出す極左一辺倒に変身する。前者はジキル早苗で後者はハイド早苗。世界的なベストセラー小説『ジキル(善の保守)とハイド(悪の極左)』のモデルは、実は高市早苗だったとも言いうる。
高市は三枚舌を駆使して皇室典範“改正”を声高に叫ぶ。これ、本心「天皇制廃止」隠しの常套!
高市は、国防/国旗/防衛装備“輸出”などの問題を語る時には、嘘・誇張・レトリックが全くなく、事実を淡淡と述べる。が、「積極財政」など経済・財政問題となると、歯の浮くような抽象語が多くなり、話し方がヒトラー演説に似ている。妄想に酔い痴れた虚妄「強い経済」を国民に信仰させたい教祖になりきっている。
一方、皇室問題になると、途端に、騙しのトリックや嘘が前面に出てくる。どうも高市は、皇室典範“改悪”問題では、疾しいことをしている罪の意識を自覚している。単純化して言うと、高市早苗が経済・財政問題を語る口調には“気狂いの喚き”一色が漂う。しかし、皇室問題になると、国民騙しのプロ詐欺師にならんと自分を叱咤激励している。
例えば、今般、皇室典範に対し破壊的な大改悪を目論む高市は、それが皇室の伝統や慣習を重大に侵犯しているのを自覚している。このことは、高市の施政方針演説(2026・2・20)の異様な文言「我が国の伝統や歴史の重みを噛みしめながら」に滲んでいよう。なぜなら、それは「皇室の伝統と慣習を国民として重大にご尊重申しあげつつ」とあるべきに、高市は、最重要な語彙「皇室」を削り、「我が国」にすり替えているからだ。
