筑波大学名誉教授 中 川 八 洋
ローマ帝国の滅亡の主因は、ゲルマンなど北方蛮族が軍事侵略したからではない。①過剰な超福祉による精神の堕落と腐敗、②祖先ローマ人の血をいささかも尊重しない多民族共生(多民族社会)主義、③祖先との切断と国家否定を教義とする伝統・慣習破壊の新宗教(当時のキリスト教)の蔓延による祖先消滅および国家意識の雲散霧消、の三つが西ローマ帝国“滅亡”の主因。外敵の侵略と掠奪は、①②③に比すれば、西ローマ帝国を“滅亡”に誘う間接的要因にはなったが、それ以上ではない。
第一節“祖先の宗教”を永遠に護持せんとする民族の義務感を喪失した日本人
ローマ帝国滅亡の諸要因は、現在の日本国には、酷似以上に、ぴったし当て嵌まる。つまり、紀元476年の西ローマ帝国の滅亡を再現するかのように、日本国は滅亡するが、それはもう間近に迫っている。なお、前者の「滅亡の諸要因」は、個別独立ではなく、相互に複合している。
が、そのうちの一つ、「祖先の宗教を継承すべき子孫たるローマ市民が、この祖先の宗教を徹底的に破壊し尽くし、自らを《祖先と切断する》という愚行に狂乱した」愚行こそは、西ローマ帝国の滅亡の最悪・最凶の要因と言えるだろう。
「初期キリスト教」はローマ帝国の滅亡の一要因。なら、同種のマルクス主義が支配の日本も滅亡!
そして、この「祖先の宗教」を徹底的に破壊尽くす、国家の存続する生命源を枯渇させた、ローマ帝国の“暴走の狂気”は二つあった。第一。現在の日本共産党のマルクス・レーニン主義に酷似する、当時の初期キリスト教。第二。血統正しきローマ人の激減に伴う、異民族との混血による雑種化ならびに大量の異民族への無規範な市民権(国籍)の附与。
初期キリスト教について日本人は、殆ど無知。そもそも関心が無い。また、日本人は極度に無教養だから、マルクスの『共産党宣言』が、この初期キリスト教を大幅に取り入れた事実すら知らない。
「共産社会」とは、カルト宗教の共産主義者が妄想・狂信する“国家否定”“親子切断(家族解体)”“道徳破壊(無・道徳、悖徳)”“法慣習の否定”を基軸とする、ユートピアが反転したディストピア。共産社会のこれら基本柱のうち、“国家否定”“民族否定”“慣習否定”“親子切断(家族解体)”は、ローマ帝国を蝕んだ“過激カルト宗教”「初期キリスト教」の理念(=現在の正常な感覚では狂気)だった。
キリスト教徒・テオドシウス帝(379~95年)の皇帝権力を通じて、ローマ帝国内における新宗教“信仰”強制力を手にした「初期キリスト教」は、数百年間も信仰されてきたローマ市民の伝統宗教を含み、既存の他の宗教すべてに対して「偶像崇拝!」と罵り、物理的・精神的にそれらを破壊し尽くすことに爆走した。これについては、ギボン『図説 ローマ帝国衰亡史』(東京書籍)の第24章「異教の最終的撲滅(357~92年)」を一読すれば、読者諸兄の頭はきっと整理されるだろう。
そこにある一文を紹介しておく。「ガリアではトゥール司教が、修道僧の先頭に立って、広大な教区内の(他宗派の)偶像(=日本の仏像や石像に相当)や神殿(=日本の広壮な神社・仏閣に相当)、神聖な木々(=日本の「神木」に相当)の破壊に邁進した‥‥。ローマ帝国内の諸神殿は打ち捨てられるか、破壊された」(386頁)。