筑波大学名誉教授 中 川 八 洋
中川『神武天皇実在論』は、校正の時、25頁ほどばっさりカットした。ために、重要な事柄がかなり未収録になった。例えば、『後漢書』倭伝にある「倭国王」の間違った訓みの問題も、この一つ。支那人のこの種の文は、必ず「国名＋官名」。間違うことは万が一にも不可能。訓みの間違いは、訓みの意図的な捏造から生まれている。
具体的には、『後漢書』倭伝にある西暦107年の記事「倭国王帥升」の、「倭国の王」を「倭の国王」と訓読みしている。「王」は官名。「倭国」は国名。なので、「倭国」と「王」の間に「の」を入れる。
支那人の漢語では、「倭やまと」は、「倭国」という国名で用いなければ、“日本（やまと）地方”とか“日本（やまと）民族”とかの意味として用いる。「倭」の古音は「ヤ」で、「やまと」の最初の一音を表記。故に、「倭国王帥升」は、表1の右欄のようにしか訓めない。
表1；古代史学界はなぜ、「倭の国王」とか「帥升」とか、わざわざ嘘訓みするのか
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原文 |
意図的な嘘訓み |
正しい訓み |
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倭国王帥升等献生口百六十人 |
倭の国王 帥升（すいしょう）らが、生口百六十人を献じ （岩波文庫版89頁） |
倭国（やまとのくに）の王（おほきみ＝天皇）□（一字脱字）帥の升らが、生口百六十人を献じ |
（備考）上記の□すなわち一字脱字は、「遣わす」の「遣」だろう。
すなわち、岩波文庫『魏志倭人伝・後漢書倭伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝』89頁のように訓むのは、嘘訓み。編訳者の石原道博が、嘘つき常習の津田左右吉と同種の、意図的な嘘訓みをしたか否かはわからない。漢語にない「国王」を“漢語である”と先入観で思い込んでいたかも知れない。
が、石原道博は、この一文の直前にある「倭奴国」の方は（89頁）、「倭（やまと）の奴国」と、「奴国」を一漢句として正しく訓んでいる。とすれば、石原道博は、意図的な嘘訓みをしたのか？
国名の表記は原則として「国」をつける。「倭国王」の三文字も同じで、「倭国＋王」と訓むのが絶対ルール。「倭奴国」と見れば、「倭（やまと）＋奴国（なのくに）」と訓む以外の訓みはあり得ないのと同じ。つまり石原道博は、「倭国王」では、絶対ルールを無視し天皇制廃止に狂奔している。
志賀島発見の金印「漢委奴国王」のうち二文字「奴国なのくに」は、絶対に切り離してはいけない二文字。支那漢語の原理原則だからだ。が、今、学校教科書を見ると全て、「奴」と「国」と切り離している。つまり、表2の真中欄にあるトンデモ誤訓みを強制している。
表2；存在しない奇天烈語「国王」を漢語だと強弁する、大嘘つき古代史学者
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原文 |
意図的な嘘訓み |
正しい訓み |
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漢委奴国王（金印） 日本国王源道義
（参考）「大日本帝国皇帝」。これは、清国への宣戦詔勅。「皇帝」は明治天皇の（外交文書上の）官名。「大日本帝国」が国名。 |
かんのわのなのこくおう にほんこくおう げん・・・ ＊官名「こくおう」など存在せず 「馬鹿！」と軽蔑されるため、この嘘訓みは誰もしない。仮にすれば「大日本＋帝国皇帝」。が、官名「帝国皇帝」の不存は自明すぎ。 |
からのやまとのなのくにのおほきみ にほんこくのおう みなもとの・・・ ＊日本人は平安時代まで「王」を「おほきみ」、鎌倉時代以降は「おう」と訓んだ。「国」も同じく、「くに」から「こく」に変化。
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「倭国の王」なら、この「王」は天皇。「倭の国王」なら天皇以外の「国王」もありえ天皇“抹殺”が可能
なぜ切り離せぬ「倭国やまとのくに」「奴国なのくに」を、「倭＋国・・・」「奴＋国・・・」とするのか。天皇制廃止を目的に、天皇を抹殺するためである。「倭国の王」とすれば、この「王おほきみ」は天皇を意味するが、「倭の国王」とすれば、大和朝廷の天皇以外の、他の国々の「王おほきみ」の可能性がありえるから、天皇がぶっ飛ぶ。
『魏志』倭人伝によれば、日本列島には三十ヶ国ほど「国くに」があるから、「倭の国王」なら「奴国or出雲国の長」も、これに該当してしまう。これが、「倭国の王」を、「倭の国王」と改竄的に嘘訓みする理由。共産革命の天皇制廃止を目指した、日本共産党の“言葉殺し”運動の一つ。
室町時代、足利義満への明帝国の外交文書「日本国の王（＝足利義満）」を、「日本の国王」と嘘読みさせる中世史家もまた（表2）、天皇制廃止しか頭にない共産党員。足利義満を「国王」にすれば、英国の国王を連想させるから、自然的に日本の天皇が存在しない錯覚がムード的に生まれる。つまり、天皇“抹殺”が雰囲気として醸成される。
日本の歴史学会全体は、古代史学界や現代史学界のように100％共産党員のみではなく、個々には共産党から独立している者も多少はいる。だが、これら少数の“独立派”も、共産党の天皇制廃止革命に直結する漢文“嘘訓み”（＝改竄）に慣れてしまい、無意識にそれに唱和している。
天皇制廃止語「倭の国王」を排せずば皇統の悠久は粉砕される←『神武天皇実在論』必携の理由
歴史を奪われた民族に未来はない。亡国一途の慣性力が年々高まるからである。初期古代天皇の一群をテロりまくり、弥生中期の天皇の起源を抹殺する、津田左右吉や林房雄のスーパー大嘘歴史に対して公憤を持たない歴史無き日本人とは、知を喪失した最低ゲス人間の集団。今日の日本人は、家鴨や豚より悪い、無道徳/反道徳の野獣と何ら変わるところがなくなった。
つまり、真実の歴史を剥奪されているのに、危機感もない自省もしない一億日本人とは、腐った鰯以上に腐蝕の極をひどくしている。このような“非国民”一億日本人から成る日本国は、当然、すでに国家ではない。死に体の“国家もどき”といえる。呼吸をし時には動き回る、奇怪な“棺桶の骸骨”一億ヶが蠢く墓場が、今の日本だと譬えられる。
この意味で、戦後七十八年間で初めて、古代史に真実の光を照射した私の『神武天皇実在論』を、日本人のうち何人が真剣に読んだか、何人が大切に蔵書したかが、この数字の多寡が、日本亡国を少しでも遅らせる重要な働きをなすだろう。私の『神武天皇実在論』を座右の書とする日本人だけが、真実の古代史を剥奪されて死に体となって腐蝕いちじるしい日本国に復活の生命を吹き込もうとする正常な精神を持つ日本国民だからだ。
換言すれば、私の『神武天皇実在論』を手にしない/読まない日本人とは、天皇制廃止の共産党に与して実在する古代天皇をテロりまくる反日極左人士の協力者/共犯者ということ。それ以上に、私の『神武天皇実在論』を手にしない/読まない日本人とは、亡国促進“阿波踊り大会”や亡国促進“ソーラン節大会”に狂喜する“白痴”非国民なのだ。あるいはロシアや中共や北朝鮮の手先なのだ。
が、今や一億日本人は全員、完全に狂ってしまった。“スターリンの犬”となって日本国の全てをロシアに献上する八年間の“祖国叛逆”大東亜戦争と田中角栄に始まる超福祉国家が、日本人から道徳の清華を咲かせる国防の精神を腐蝕的に奪い尽くし、日本人を共産主義的人間に改造したからである。日本国民の“生命・自由・財産”を擁護するという正常は、GHQの占領期とその残滓があった若干を除き、1937年7月から今に至る八十五年間、日本の政治には一欠けらも存在しない。
この暗黒の闇に包まれ未来を喪失した日本国において、その国家死滅から救出する方策の一つは、古代日本の真実の歴史（祖先の営み）を日本人の脳裏に呼び戻すことである。祖先に関する真実の歴史には民族再生の摩訶不思議な力が宿っている。祖先に関する真実の歴史には、腐蝕と空洞の日本人の脳内に、知と精神とを蘇生する特効薬の機能を持つ。
祖国の未来や子孫に関する事柄を前にして、“空前絶後の対ロ売国奴”安倍晋三は平然と「俺の知ったことか」と言った。そうした無責任と刹那主義に対し、祖先に関する真実の歴史に頭を垂れること自体が、この無責任と刹那主義を矯正する働きを持つ。
このためには、私の『神武天皇実在論』を手にして読む以外に他策はない。私の『神武天皇実在論』を座右の書とする日本人だけが、日本救国の真正の日本国民になりうるからだ。
朝日新聞の吉野ケ里”真赤な嘘報道”は、「二～三世紀の大和朝廷抹殺→天皇制廃止」の革命
本稿を書いている時、共産党の機関紙、赤い朝日新聞が、6月6日付で、古代史“攪乱”の偽情報報道をした。そこで、一言。この記事、佐賀県の吉野ケ里遺跡で、実に小さな石棺が見つかったと、報道に値しない泡沫問題を大仰しく書いている。バカ丸出しではなく、悪丸出し。
この石棺の墓穴は、村長クラスの「縦3.2㍍、幅1.7㍍」という超ミニ。「320㍍、170㍍」ではない。報道すること自体、学術性に反し、政治的な犯意ある犯罪。が、“赤い大嘘つき”朝日新聞は、大和朝廷の史実を抹殺する歴史改竄を目指して、次のように書いた。
「『魏志』倭人伝が記す、クニを治めた首長の墓の可能性があり、今後は副葬品を調べる」←クニのレベルなどでは全くない。「縦3.2㍍、幅1.7㍍」という超ミニ墓穴であって、「320㍍、170㍍」ではないからだ。
「二世紀後半～三世紀中頃の有力者の墓とみられる」←クニ級の首長のだと、朝日新聞は煽る。この異常な誇張は、「伊都国や奴国の王と同レベル」との主張。だが、西暦100年前後の“伊都国の王族”の墓は発掘されている。糸島市の歴史博物館には、その発掘遺物が展示されている。これらと比較すれば、こんな超ミニ墓穴など、クニ級の首長のではないのは明白以前。
この朝日新聞記事は、西暦100年前後ではなく、「二世紀後半～三世紀中頃」と、『魏志』倭人伝が「邪馬台国やまとのくに」と表記した、第七代・孝霊天皇から第十代・崇神天皇の御代の事だと主張。ならば、この三世紀中頃、大和朝廷が築造した墓と比較するのが、学術的に正しい報道だろう。大和朝廷の第十代・崇神天皇は、大伯母の百襲姫（第七代孝霊天皇の皇女、『魏志』倭人伝が記述する卑弥呼or女王）の薨去に伴い「箸墓はしのみはか」を築造した。おそらく西暦248年～256年の八年の歳月を投じた、かの有名な大きな前方後円墳。
箸墓の大きさは、「墳長280㍍弱＝円部150㍍＋前方部130㍍」で、高さは16～30㍍。今般、吉野ケ里で発掘調査しているのは、ゴミほどの「縦3.2㍍、幅1.7㍍」。余りに小さすぎる。報道すること自体ナンセンス。嘘つき朝日新聞のエゲツナイ他意が丸見え。
『魏志』倭人伝が「邪馬台国」と表記した国が「大和朝廷のくに」を指すのは自明。「台」の古音が「ト」なのも、この証拠の一つ。しかも、『魏志』倭人伝が、箸墓を「径百余歩」と描写しているように、魏帝国は、百襲姫が気になって気になって仕方がなかったほど徹底的に調査したようだ。径とは後円部の直径の事、そして歩とは六尺で一尺は24.3㎝だから百歩は145㍍となる。記述「百余歩」は、実際の150㍍とぴったり一致。
吉野ケ里は、弥生時代の中後期に、おそらく日本で最も富裕なクニ「奴国」に属する、その一地方。環濠集落の吉野ケ里は、人口せいぜい五千人。一方、奴国は『魏志』倭人伝によれば二万戸。鬼頭宏によれば人口二十万人だから、奴国とは、吉野ケ里が約四十ヶほど集まった規模。
この奴国が大和朝廷に服属するのは、後漢に第五代・孝昭天皇が朝貢された107年と推定されるから、吉野ケ里は、大和朝廷の直轄地「奴国」のさらにその下で奴国に属する一地方。それがどうして「クニ級の首長」なのか。朝日新聞のアクドイ読者騙しのデッチアゲ嘘歴史は、凶悪過ぎて“犯罪の域”にある。
附記；私の『神武天皇実在論』298頁＆300頁に誤記あり。訂正します。
298頁7/10/13行目の「倭の国王」を「倭国の王」に、298頁8行目と300頁3行目の「国王」を「倭国の王」に、訂正のほど願います。本稿の表1＆2を割愛した以上、この訂正を欠いてはならず、猛省しています。
（2023年6月8日記）
