“極悪「対ロ」売国奴”安倍晋三は、プーチンの対ウ侵略・虐殺・拉致・略奪を擁護すべく、“NATOロシア関係史”を捏造的に大改竄──法務大臣は、指揮権発動し“極東ロシア軍のインフラ整備に三千億円を貢いだ安倍晋三を「刑法外患罪(死刑)」で逮捕せよ!

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筑波大学名誉教授   中 川 八 洋

 日本の政治家は、例外がほんの数名いるが(1%未満)、愛国心が欠如しているのが絶対多数(99%以上)。つまり、日本の政治家とは、祖国に対し叛逆的で祖国を毀損するのが普通で常態。

 歴史を振り返っても、日露戦争の終了とともに武士の子弟が大量に引退した1906年以降の日本では、愛国心ある政治家などほとんど消えた。大衆が政治家を決める投票権を持つ“最悪の政治制度”が始まる大正デモクラシー以降になると、日本の国会議員は、共産主義者か、そうでなければ人格・教養における水準以下のクズ/ガラクタ人間の職業となった。

 これこそは、オルテガが『大衆の叛逆』で考察した通りの、腐敗と堕落が阿波踊る大衆デモクラシーの政治の特性である。この意味で、河上肇の一派・安倍寛を初代とする安倍家コミュニスト三代の家系に生まれ、スターリン/野坂参三崇拝の安倍晋太郎の意思を継ぎ、心にもない「民族系」演技で人気を博しつつ、対ロ売国一直線の安倍晋三がトッチャン幼児のように燥ぎ回っている光景は、大衆が叛逆する日本政治の末期を飾るものと看做せば納得できよう。

 かくも日本国の政治情況は、目も当てられない状況になった。これは、“国民騙しの天才”ヒトラーに洗脳されて酔い痴れた、1930年代後半の(破局・破滅に飛びこむ直前の)ドイツを彷彿とさせる。一億日本人は、日本国を地球から消さんとする国民騙しの安倍晋三らが吹く“ハーメルンの魔笛”に、ピーヒャラ踊って、阿鼻叫喚の地獄へと行進している。

総理在任中も今も大嘘を吐きまくる“成蹊大卒スーパーお馬鹿”安倍晋三は、ロシア人

 鉄面皮の安倍晋三には、反省というものが無い。国家存亡の危機に直面し血を流し続けるウクライナの惨状を知りながら、安倍晋三は今尚、鈴木宗男を同志に、熱烈なプーチン擁護に全力投球。

 侵略者プーチン礼讃を今も止めない、異常な安倍晋三の“反・正義”言動の目的は、ロシアに北海道を侵略させるべく、2013~20年、二十七回もプーチンと抱き合い、極東ロシア軍の基地周辺のインフラを整備してあげ極東ロシア軍を増強することであった。安倍晋三は、北朝鮮人のKGB鈴木宗男と同じく、ロシアこそ祖国だとの信念にわずかの揺らぎもない。安倍晋三の鞏固な信条「日本はロシアの奴隷国であるべきだ」は、安倍を死刑百回に処しても変わることはあるまい。

 この事は、京都市6月4日の講演の、安倍晋三のペテン師流“嘘”言説にも露わであった。安倍晋三は、「プーチンは米国に騙された」から、そのウクライナ侵略には三分の理がある、とプーチン侵略を擁護した。しかも、安倍晋三は、具体的にロシアは何を米国に騙されたかについて、驚くなかれ、「真赤な嘘《NATO東方不拡大》という対ロ約束を米国が破った」と明言した。が、本当の歴史事実は、次。

一、米国は、一度も、匂いほども、ロシアにNATO東方不拡大を約束していない。

二、ロシアは、NATOの東方拡大について、エリツィン大統領が公式に了解。また、プーチン大統領は積極的に支持。これが、米ロ間の外交史に関わる、史料に基づく正確な史実。

 この事実に照らせば、「れいわ新選組の山本太郎(中核派、北朝鮮人)、安倍晋三、橋下徹(“狂人”非人)、鈴木宗男(北朝鮮人)」とは、プーチンがウクライナ侵略の口実として世界に放った、世紀の大嘘「米国は、対ロ約束《NATO東方不拡大》を破った」を、嘘つきプーチンの拡声器となって日本国民に注入する“反日極左のKGB四人組”といえよう。

 この四名は、日本の国家安全保障を危殆に瀕せしめる、祖国叛逆の犯罪者として同類だし、共犯者でもある。安倍晋三/鈴木宗男/山本太郎を議員辞職させよう。また、革マル派系の“狂人非人”橋下徹の弁護士資格を剥奪しよう。

ブッシュ大統領が却下した、ベーカー国務長官の私的意見「NATOは〈東独〉不進駐」

 安倍晋三は、教師も学生もお馬鹿ばかりの成蹊大卒のスーパーお馬鹿。だから、安倍晋三が外交史など理解できるなら、小学校一年生の野球少年なら誰でも、“第二の大谷翔平”として大リーグで活躍できるはず。

 安倍晋三は6・4京都市講演会で、「ベーカー国務長官は1990年、東西ドイツが統一してもNATOの管轄権(「NATO軍の進駐」のこと?)を拡げない、とゴルビーに言った」「それなのに米国は、ハンガリー、チェコ、バルト三国とNATO加盟国をどんどんと東に拡大した」と述べた。アホ草。

 米国のベーカー国務長官は、モスクワにおける東西ドイツ統一問題の協議で、ソヴィエト・ロシア最後の共産党書記長ゴルバチョフに、“旧・東ドイツ側にはNATO軍を進駐させない”と、(米国政府の立場ではなく)個人的意見を述べたのは事実。が、ベーカーのこの私的意見は、ワシントンに戻ってブッシュ(父)大統領に報告すると、ブッシュから「お前は馬鹿か」と即座に却下された。つまり、米国の公的な対露提案にはならず、当然、米ロ間の約定になることはなく、そのまま立ち消えた。

 すなわち、度し難い対ロ売国奴で今尚“プーチンの犬”安倍晋三は、二つの嘘話をでっちあげている。“安倍流”嘘話の第一。「旧・東ドイツ側にNATO軍を進駐させない」を、「旧・東欧諸国をNATOに加盟させNATO軍をここに進駐させるようなことは、しない」に狡猾にも摺り替えている。

 安倍晋三の嘘話の第二は、「ベーカーは米国政府代表として、ゴルバチョフと署名入り文書で約束を取り交した」との真赤な創作話を前提に持論を展開している。外交においては、署名入り文書が無ければ「約束した」とは言わない。

 1945年2月11日付のヤルタ秘密協定は、肩書“米国大統領”は記載されていないが、ルーズベルトの署名がある。故に、米国国務省は、トルーマン大統領以降、「米国政府の公的文書とは認めないが、ルーズベルトとスターリン間の個人間の約束文書であることは認める」との見解を日本政府に説明した。文書と署名は、国家間約束の絶対条件である。

 ベーカーがモスクワで発言した、文書のない“馬鹿しか発想できない戯言”は、ロシア側に記録された。が、このモスクワ対談録の解釈を巡って、クリントン米国大統領の説に、エリツイン初代ロシア大統領は納得したことが、クリントン図書館に保存されている(表1参照)

 なお、「ベーカーが度外れの馬鹿」なのは、東西が統一した後の旧・東ドイツは、西ドイツのNATO加盟国たる地位を自動的に引き継ぐ。この旧・東ドイツ域にNATOが進駐しないなど実際的には不可能だし、仮にもそんなことをロシアに約束したら、統一ドイツに対する、ロシアの内政干渉権を認めることになり、統一後の新ドイツは主権国家ではなくなる。ベーカーのスペルBakerを“馬鹿”と発音することは、知性ある日本人なら常識だろう。

“NATO東方拡大”を巡る、主要な“NATOロシア関係史”

表1;NATOに阿諛するロシア(1989年~2006年)は、2007年、NATOに対決するロシアに豹変

 1989年11月の“ベルリンの壁”崩壊以降のNATOロシア関係史の核心は、なぜロシアは2006年末までの十七年間、“対NATO揉み手&阿諛外交”を巧妙に演技したか、であろう。それはまた、西側が、ロシアの〈自由社会の一員〉演技に、十七年間も、まんまと騙された原因は何であったか、を自ら問い質し自責する教訓に他ならない。

 それだけではなく、2008年8月のグルジア侵攻で、ロシアは侵略ロシアの本性を露わにしたのに、この時、西側は対ロ防衛に一丸となる当然の対応をしなかったのは何故か、も自由社会が今、自らに問うべき重大課題だろう。また、この2008年、お馬鹿ベーカーが発案した、戦争を惹起せしめる有害無益なCFE条約を、なぜ破棄しなかったかを、欧米諸国は、特段に反省すべき。

 1989年11月からのポスト冷戦の米国内で、旧東欧やバルト三国が再びロシアに侵略されると懸念したのはネオコンだけだった。ラッセル・カーク系の伝統コンはブッシュ(息子)が大統領になった2001年1月にはすっかり消滅していた。このネオコンの心配を政策の俎上に載せた大統領はクリントンとブッシュ(息子)だけ。ブッシュ後の米国には、米国的な外交は消滅して、存在しなかった。

 現に、2009年からのオバマ大統領はマルクーゼ系の共産主義者で「反核」の極左。2017年からのトランプ大統領に至っては、アメリカ第一主義者(米国国内だけに自閉症的に引きこもる狂イデオロギー信者)で外交否定主義者。当然、トランプ外交など、極左オバマ以上のスーパー極左で、外交ではない。簡単に言えば、トランプ外交とは有害限りない“狂人の喚き外交”。反・外交の極み。

 だから、日本でもトランプ狂は全員“保守偽装の北朝鮮人”のみ。例外は一人もいない。トランプ支持者をリストすれば、誰が北朝鮮人かがわかる。特に、米国の北東部七州の選挙開票不正に関するトランプの狂気じみたキャンペーンは、仮にあったとしても僅かな票だから、選挙結果を左右することは無い。つまり、この選挙開票不正を“騒動”化すること自体、米国政治の内部撹乱に当る。米国政治を不全化する一種のクーデタに相当する。

 要は、レーガンを尊敬する保守主義者マケイン上院議員が大統領になれなかった2008年、米国の保守は死んだのである。米国におけるこの“保守の死”は、米国無しでは秩序を維持できない世界が、戦間期と同様な無秩序なカオスへ再び転落する号砲でもあった。“直感の天才”ヒトラーと遜色がない、極悪人プーチンの勘は鋭く、米国の“保守の滅亡2008年”を察知し、この年、プーチンは北京オリンピックの最中を選んで、グルジア侵略を決行した。

 グルジア侵略は、チンギス・カンの末裔を自認するプーチンの“世界制覇の野望”、少なくとも“ユーラシア大陸制覇の野望”に向けた派手な出陣パーティでもあった。2008年のプーチン世界侵略への門出を祝って、プーチン応援にしゃしゃり出た“西側の大物ロスケ”が二人いる。ロシアの侵略戦争に痺れる、KGBメルケル独首相および極左の仏サルコジ大統領。

 これらプーチン側の動きとは対極的に、ロシアの再膨張開始を世界で一人寂しく切歯していたのが、退任直前の保守ブッシュ大統領であった。が、米国におけるロシア再膨張放任主義は、オバマの逆さ外交“反核”によって、ますます、その濃度を濃くしていった。プーチンの高笑いは、「オバマの八年、トランプの四年」の十二年間、止まることはなかった。世界は、世界無秩序を目指すオバマとトランプの手引きもあって、ついに主権国家ウクライナ抹殺の2022年へと突入したのである。

マンネルヘイム元帥のソ芬“冬戦争”とチャーチルのフルトン演説を、拳々服膺せよ!

 さて、話をNATOロシア関係史に戻す。ロシアが対NATO“協調”外交を、対NATO対決姿勢に大転換した2007年初頭とは、ロシアのグルジア侵略の一年半前。プーチンは、米国における“保守の消滅2008年”(=2008年のロシア侵略放任主義の発生)を、どうやらグルジア侵略の一年半前には確信したようだ。

 ここで、先達の知を思い出そう。必ず二十年、三十年先を見据えて世界制覇の野望を準備しているロシアに対し、米国のあるべき外交を警鐘乱打した、戦中・戦後米国の“ロシア先見者”には、スパイクマン博士/バーンズ国務長官/パットン将軍/バーナムらネオコン/レーガン大統領などがいる。これらの賢者に対し、我々は敬意を捧げてこそ、カオス化する世界から脱出する智慧を初めて手にすることができる。また、これら偉大な先見者のロシア政策が、残念ながら一貫した恒常的なものになりえないと悲憤慨嘆しようではないか。

 が、このような動きは、今の自由社会には煙ほども存在しない。これが、今日の自由社会の悲劇の原因なのだ。世界平和の破壊的崩れは、このような、スパイクマン博士/バーンズ国務長官/パットン将軍/バーナムらネオコン/レーガン大統領への敬意も知見も不在という、知性無き大衆にその政治を委ねるモボクラシーが跋扈する反・政治制度に発生する。

 自由社会の“知の欠如”は、反共反ロを信条としたチャーチルやマンネルヘイム元帥を継がんとする者の少なさにも端的に明らかだろう。戦後の自由社会がロシアや中共に翻弄される暗愚と惰弱の深刻さは、自由を守らんとした傑出した偉人に対する、いかなる尊敬の念も有さない大衆を政治の主体とする、mobがdemoのcracyとなっていることが大きい。

 マンネルヘイム元帥のソ芬“冬戦争”とチャーチルのフルトン演説こそは、仮にも世界が《平和=安定的な法秩序》を欲するならば、拳々服膺すべきバイブル。が、このように理解できる知性は、英国の貴族層とオックスフォード大にかろうじて細々と引き継がれているだけで、日本では中川八洋ひとり。2022年のウクライナ人の悲劇に涙し猛省する“自由を欲する者”は、これからは、世界の国際政治という巨大飛行機に対し、マンネルヘイム元帥とチャーチルを羅針盤として操縦することを誓うべきだろう。

注;「NATOロシア関係史」の参考文献

1、Mary Sarotte Not One Inch;America,Russia and the Making of Post‐Cold War Stalemate.

2、Mark Kramer,“The Myth of a No‐NATO-Enlargement pledge to Russia”,The Washington Quarterly,April 2009.

3、Kirk Bennett,“What Gorbachev did not hear”,The American Interest,March 12 2018.

4、プーチンの「ミュンヘン安全保障政策会議Munich Security Conference」演説の英訳は、ネット「Speech and Discussion at the Munich Conference on Security Policy Feb.10 2007,01;38」に収録されている、Vladimir Putinで始まる文。かなり長い演説で、対NATO/対米《ロシア外交》を一気に大転換するぞとのプーチン宣言。これが、グルジア侵攻とウクライナ侵略の出発点であることも即座に伝わってくる。

侵略の皇帝プーチンを増長させた、ベーカー推進の有害ナンセンスCFE条約(1990年)

 1990年代初頭の米国国務長官だったベーカーは度外れの馬鹿だ、と先述した。以下は、1990年12月、私が筑波大学で講義した講義ノートの一部。この講義ノートのタイトルは、「ベーカー(馬鹿)国務長官とCFE(欧州通常戦力)条約」とある。どうやら1990年、私はベーカーを「馬鹿」と発音していた。私がベーカーに唖然とした理由にはいくつかあるが、次はその一つ。

 1989年11月をもって東欧は、ロシア帝国に収奪されるロシア植民地から解放された。ために、①ワルシャワ条約機構(WTO)のソ連・東欧軍は解体され、西ドイツに吸収される東ドイツを除く旧・東欧諸国五ヶ国は独自行動に移行した。恐らく、暫くはフィンランド的な中立国になるが、旧東欧の多くは反ロだから、その後は西側を指向するはず、と。

 一方、②ソ連軍はこの旧・東欧諸国への駐留はできないから必ず旧東欧六ヶ国から放り出され、1989年11月時点に比して平均で700km東に後退(退却)が、不可避となる。こんな大流動が起きている地域に、軍備管理条約を締結するなど烏滸の沙汰。CFE条約はいずれ戦争を芽吹く土壌の“反・平和の有毒肥料”になると、私は授業で力説した。

(備考)旧・東欧六ヶ国とは「東ドイツ/ポーランド/チェコ・スロバキア/ハンガリー/ルーマニア/ブルガリア」。東ドイツの西ドイツへの吸収合邦は1990年10月。東ドイツはこれをもってWTOを離脱。他の東欧五ヶ国が、東ドイツに続きたいと考えるのは、ごく自然。が、狂気の人ベーカーは、WTOに残るはずと考えたのである。

 そもそも東欧解放とは、共産党書記長ゴルバチョフですら理解していたように、「今後のソ連は、ヤルタ協定を誠実に履行し、ソ連が不法占領し続ける東欧六ヶ国に主権を返還する」ことを意味した。だから、主権を剥奪され強引にソ連軍に編入させられ、NATO軍に向かって先鋒で突撃を強制させられている旧・東欧五カ国が、WTOに留まる事など万が一にもあり得ない話。東欧六ヶ国は、1989年11月、実態的にはWTOから完全に離脱した。それはWTOが実態として解体したのである。

 が、1990年11月時点、(東ドイツが消えて)東欧五ヶ国がWTOに形式的に残留していたのは、ソ連軍が、西側に撤兵費用を出せとごねている最中で、東欧五ヶ国から未だに撤兵していなかったからだ。東欧五ヶ国は、「WTOなんかアカンベー!」を叫びたい本心を、ソ連軍が撤兵するまで我慢していただけ。だが、脳内空洞なのか、ベーカーは、こんな当たり前の情況が全く理解できなかった。

 ベーカーは、1990年に入っても、西ドイツに吸収される東ドイツを除き、他の五ヶ国はワルシャワ条約機構に残るはずだとの大妄想に浸っていたのである。ベーカーは、馬鹿というより、精神病院に入院すべき狂人。故にベーカーは、1990年を通して、NATO(16ヶ国)とWTOの通常兵器を削減させる、ナンセンスを超える超ナンセンス条約の策定に勤しんだのである。私は、唖然として開いた口が塞がらず、「ベーカー(馬鹿)国務長官とCFE条約」なるタイトルの講義ノートを急ぎ作った(1990年12月)

 ベーカー(馬鹿)製の、1992年7月に発効した合計三十ヶ国のCFE条約(1990年11月調印、調印したバルト三国は翌年に離脱)とは、陸軍の中の武器五カテゴリーに関して上限数を定めた“陸軍力の軍縮”であった。それは、第二世界大戦の元凶の一つになった、まさに世界軍縮会議の愚行を繰り返す、その二番煎じだった。

 世界軍縮会議は、必ず第二次世界大戦の主因となると1932年から警告し続けたのが、“戦争防止の大天才”チャーチル。チャーチルは、絶対真理「陸軍力の軍縮をすれば世界大戦が発生する」を掲げて、フランスの陸軍力削減に走る世界軍縮会議に猛然と警告した。この「陸軍力の軍備管理的な削減は、すれば大戦争」という、国際政治の真理については後述。この問題に比すれば少しマイナーだが、CFE条約には大欠陥が二つある。

 第一。NATOとWTOが対峙した欧州東西冷戦期の対立構造が、東欧解放後にも、ソ連邦崩壊後にも、そのまま存続しているとの、バカバカしい限りのスーパー架空を、ベーカーは前提にしている。だが、今般のロシアのウクライナ侵略は、旧・ソ連帝国内の戦争であるように、旧NATO国家と旧WTO国家との間で起きた戦争ではない。

 第二。欧州とユーラシア大陸の全体の“陸軍力の戦力が低減すると、戦争の危機が低減する”とは、幼稚園児のごとき、あり得もしないおバカ発想。例えば、AとBの暴力団抗争で、双方がピストルを十丁づつ保有しているケースと三丁づつ保有しているケースを想定し、後者の方が前者より抗争が大幅に低減するのか、と考えてみるがいい。抗争は別の原因で起きる。三丁づつと十丁づつの相違は、抗争時の銃器死傷者数の違いだけ。

 現にウクライナは、陸軍力がロシアよりも(二十分の一に近い)十分一以下であったことが、ロシアの侵略を招いたのである。陸軍力の弱体化こそ、戦争を招く、戦争の直接的な原因なのだ。

 第三。陸軍力であれ、核戦力であれ、(警官のピストルは善で、強盗のピストルは悪とするように)「必ず「善(防衛)の武器」と「悪(侵略)の武器」に峻別すべきである。この善悪の差別をしない軍備管理なら、それは侵略者を必ず有利にするから、必ず戦争が起きる。軍備管理そのものが“戦争の芽を育てる温室”となる現実は、こうして発生するのである。

表2;CFE条約が定める通常戦力“上限数”(上段は現有数、下段は削減目標数)

(数字は、ソ連邦崩壊後、条約が事実上発効した1992年7月時点)

(旧東欧五ヶ国は、チェコ・スロバキアが離婚し二ヶ国になったので六ヶ国)

(核戦力以上に決定的に)“防衛の要”たる陸軍力を軍縮すれば、侵略を招き亡国に至る

 「軍備管理そのものが“戦争の芽を育てる温室”となる」ことについては、CFE条約がロシアのウクライアナ侵略の原因の一つになったことでも証明されていよう。戦争を民族文化とするロシアにとり、CFE条約は、ロシアが侵略しやすい軍事態勢をロシア周辺に構築する、願ってもない最高に好都合なもの。つまり、CFE条約を推進してくれる米国こそは、ロシアにとり“役に立つ白痴”であった。

 だから、エリツィンもプーチンも1990年から2006年の十七年間、全力挙げて、“ブッシュ(父)に阿諛する”“クリントンにゴマを擂る”“ブッシュ(長男)に揉み手する”に徹したのである。ロシアが計画する周辺国侵略にCFE条約は多大に貢献するが、米国主導のNATO東方拡大など(ウクライナとグルジア以外なら)ロシアが計画する侵略にとってさしたる障害にはならない。だから、NATOへの新規加盟には基本的に“賛成”“支持”を表明し、代わりに米欧の陸軍力減滅をうまく誘導していたのである。

 このことは、CFE条約によるNATO側の陸軍力戦力の大削減で明らかだ。冷戦の終了時(1990年1月)のNATO16ヶ国の陸軍力の総計に比して、2021年12月末のNATO30ヶ国の陸軍力の総計は、二分の一になった。一ヶ国平均にすれば、陸軍力は四分の一になった。何のことはない、米国がCFE条約でやったのは、ウィスキー瓶数を二倍に増やした悪徳バーが、それらを水で薄めウィスキー総量を半分にした犯罪と同じで、自ら墓穴を掘っていたのである。

 平和構築で大切なことは、NATO加盟数を増やすのではなく、NATO加盟国が陸軍力その他での対ロシア戦力を強化することである。が、“陸軍力の戦力が低減すると、戦争の危機が低減する”を狂信する、本末転倒の気狂いベーカーが考えた“戦争促進の有毒肥料”CFE条約こそ、NATO加盟国の軍事力を極度に弱体化したのである。

 しかも、米国はCFE条約“信仰”において、在欧州“通常戦力”を大幅に削減しただけではない。米国は、痴呆症が突然襲ったレーガン大統領が奥方にノーベル平和賞を見せたい一心で、ゴルバチョフに唆されるまま、SS20の解体とアフガン撤兵だけを代償として、米国の最高核兵器パーシングⅡ108基すべての解体を決定した。これが、1987年12月に締結した対ロINF廃絶条約である。そして、これ以降、在欧州核戦力は矢鱈目鱈に減らして行く慣性が止まらない。今では、対地攻撃機用の戦術核が100ヶあるに過ぎない。

 つまり、現在、米国の在欧州配備の核戦力は、1989年時に比べると、おおむね百分の一。通常兵器の数分の一どころではない。プーチンは今般、米国は決して参戦しないと踏んだが、どんぴしゃり的中した。米国は、武器は送ったが、確かに参戦しなかった。武器のうち榴弾砲は一ヶ月以上、多連装ロケット機もニヶ月も遅かった。それらを米国は、ほとんど欧州には配備していなかったからだ。それ以上に、中距離核戦力の配備がゼロ状態では、米国にとり参戦リスクが大きすぎたのである。

 1999年3月、米国だけが大削減する不均衡inequalityのCFE改正条約(「CFE適合条約」)に、ロシア工作に屈したクリントンは同意した。この改悪条約は、批准国数が足りず発効しなかったが、米国はこれを口実に在欧州通常戦力を大幅に削減した。米国はロシアの罠に嵌まった。

 この結果、ロシアとしては十分に満足できるほど、米国「在欧州」通常戦力は弱体化し貧弱になった。プーチンは呵々と大笑し、“最早、CFE条約は用無し”と、2007年12月、CFE条約の不履行を宣言した。続いて2015年3月、プーチンはCFE条約からの離脱を宣言した。要するに、同条約はロシアに利用されるだけ利用された挙句に、ポイ捨てされたのである。ベーカーは1990年11月、CFE条約と言う有毒肥料をNATO側に撒いていたのである。ロシアがウクライナ侵略をしやすい土壌を作ったのは、ベーカーであり、そのCFE条約である。

 なお、賢明なバルト三国は、1990年11月にCFE条約に調印したが、これは危険だとばかり、翌1991年10月に早々と離脱した。ウクライナもそうすべきであった。

「通常戦力の軍備管理条約は戦争への道」と喝破したのは、わが師匠チャーチル

 中川・保守主義哲学がバークの継承であるように、中川・皇位継承学が井上毅の継承であるように、中川・国際政治学はまた、チャーチルのそれの継承である。私が渉猟した膨大な数の国際政治学の書籍のうち、何度も読んで自分の血肉にしたのは一冊だけ。1930年代のチャーチル下院演説集『While England Slept 1932~38』が、それ。

 この本には、チャーチルのあの最有名な、第二次世界大戦の元凶となった1938年9月末締結の「ミュンヘン協定」批判演説が収録されていない。この欠落しているチャーチル下院演説は1938年10月5日で、タイトルは「A Total and Unmitigated Defeat」。英国政府が出版した『チャーチル演説集』全八巻の第六巻に収録されている。

 このチャーチル国際政治学の白眉演説(実態的には論文)が、日本で翻訳されていないのは、日本の学界ではチャーチル研究は絶対禁止で、厳しく検閲されているからである。現に、1945年から七十七年も経ちながら、日本の大学で、チャーチル研究をした教授は一名もいない。日本の外交が完全なロシア属国主義/ロシア「対日侵略」歓迎主義なのは、共産党による大学人監視・管理が刑務所の囚人監視より厳しいことによって生じた当然の現象。コーク卿/バーク/アクトン卿/チャーチル卿/アレクザンダー・ハミルトン/ジョージ・ワシントンなどの保守主義哲学思想に関する研究も、例外一つもなく、すべからく日本の全大学から完全追放されている。

 それはともかく、『While England Slept 1932~38』を読めば解るが、チャーチルは、「軍備管理・軍縮は100%戦争の温床になる」「平和を欲するならば、万が一にも軍備管理・軍縮をしてはならない」と、政治家とは思えない、超一流の大学者的な学術理論を構築して訴えている。

 確かに、軍備管理・軍縮の理論は、侵略する悪の大国と侵略される善の小国との差別・区別をしない。両者を平等に軍備削減させては満足する、実に戯けたイデオロギーor幼稚な先入観のキワモノ理論。現に、今、ウクライナ・ルハンシク州での攻防戦では、榴弾砲や多連装ロケット機MLRSなどの火器で、「ウ側1に対して露側7~15」だから、戦意が高いウクライナでも、退却を強いられる致命的劣勢に陥らざるを得ない。これが、“戦争発生器”CFE条約が目指したものなのだ。

 さて、“欧州全域の平和をもたらす”が謳い文句のCFE条約だが、この通常戦力削減条約は、ウクライナがロシアに侵略されないよう、ウ側の陸軍戦力をロシアの四倍にしていたのか。逆だった。ウクライナの陸軍力を、ロシアの十分の一以下にしていた。

 CFE条約は、ロシアが自分より四倍の陸軍力を持つ国には戦争を仕掛けない、ロシア民族の戦争文化を考慮していない。軍備管理・軍縮は、このように現実情況を一切考えることはしない。基本的には、真赤な法螺話「数的に皆で、武器が低減すると、戦争発生の確率が減ってくれる」を前提にした、嘘偽りの虚構の願望を土台としている。つまり、知的に低級で人格的に下劣な政治家の反・平和ごっこに供するのが軍備管理・軍縮条約の本性。

 ウクライナの悲劇から日本が学ぶべきは、日本の対ロ自衛力が、最低でも極東ロシア軍の四倍にしておく真理に覚醒することだろう。具体的には、ロシア軍は被侵略の標的国の陸軍の“火器”数や戦車数を見て、侵略するかしないかを決定する。とすれば、ロシアからの侵略を未然防止(抑止)したいのなら、戦車・歩兵戦闘車輛はロシアの四倍、榴弾砲・多連装ロケット機もロシアの四倍にしておくのが、最低限必要な賢明さということ。

(2022年6月11日記)

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