ウクライナに学び、樺太天然ガス輸入(ロシア天然ガス依存)を即時中断せよ──日本経済には、「原発推進」以外の発展の道は無い

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筑波大学名誉教授   中 川 八 洋

 ロシアは、契約などお構い無しに、そのエネルギー輸出を「植民地」支配の政治的道具として用いる。ロシアにとって隣国とはすべて植民地であり、対等な主権ある国家だと認めるような考えはロシアにはない。ロシアとはまさしく、野蛮国であり、非文明国の典型。

 このようなロシアは、当然、“法の支配”など無縁の国家。そもそも、近代社会の“契約”の概念すら存在しない。ロシア民族が尊重するのはただ“力”のみ。この“力”とは、国民を支配する絶対的な政治権力であり、隣国を侵略し支配する軍事力である。

 ロシアについて、日本では大きな誤解というよりも、非常識も甚だしい“度し難い神話”が横行している。その第一はなんと言っても、ロシアが野蛮だったのは、レーニン以来、独裁者スターリンらの共産体制だったためであり、共産体制を放棄しソ連邦が崩壊した一九九二年以降は、ロシアは通常の欧米諸国と同じ国家に戻ったという神話。

 何という馬鹿げて危険な謬説か。ロシアとソ連とは、国内政治・経済体制では確かに大きく異なる。が、対外政策においてロシアとソ連との間に差異はまったく無い。ロシアの対外政策は、十三世紀のモンゴル帝国のままであり、一四八〇年にできたイヴァン三世のモスクワ大公国のそれから何一つ変化していない。五百年以上のロシアの歴史は、ロシアが文明的な発展と成長を決してしないことを、余すところなく明らかにしている。

親欧米政権の価格は、親ロ政権の価格は倍 ──国家間の近代貿易がわからない、前時代的な植民地交易のロシア

 ロシアは、親ロ派のヤヌコビッチ大統領の政権の時には、ウクライナ向けの天然ガス価格は「268・5ドル/1千㎥」だった。だが、ウクライナ国民が腐敗極めたヤヌコビッチを追放し(二〇一四年三月)、親欧米派側が暫定政権を掌握すると、この価格を「485・5ドル/1千㎥」へとほとんど二倍の八割も一気に値上げした(四月)。「親ロ派以外の政権は認めない」とのロシアの脅迫であり、軍事的侵略に準じる、経済による一種の侵略行為である。  

 この制裁値上げは、個々のウクライナ国民の生活を直撃するだけでなく、外貨準備その他決して豊かでないウクライナ国全体の経済を大混乱におとしいれ、親ロ派や在ウクライナのロシア人に蜂起させる呼び水の一つとなった。この天然ガスの価格二倍高騰戦術が、ウクライナでの親ロシア派の暴力的独立運動の炎を燃え盛らせる事に絶大な効果があったことを、日本はもっと拳拳服膺したらどうだ。  

 ロシアとは、隣国に対しては、植民地支配の対象としか考えない野蛮な民族である。このことは、こんなベラボウな価格値上げに無茶すぎると、交渉を求めたウクライナに対して、「通告どおりの八割値上げ分を含む代金(20億ドル)を支払わなければ、六月三日、ガス供給を停止する」との最後通牒をウクライナに突きつけた、ロシアの態度で一目瞭然。

 七日の大統領就任式典前であったが、ボロシェンコ次期大統領は、六月二日、代金の一部7億8600万ドルを支払った。これに対するロシアの回答は、まるで暴力団のそれ、「では六月九日まで停止を延期してあげるが、その後は知らないぜ!」だった。  

 ロシアのこの阿漕な蛮行に驚いたEUは急いで、天然ガスと石油の“脱ロシア”政策を開始した。現在のEUのロシア依存は、天然ガスは約四割、石油は三割。ロシアではない(カスピ海西岸に位置する)アゼルバイジャン国からの天然ガス供給パイプラインの敷設(「サウス・ストリウム 南川」という)は、この筆頭。このほか、米国からのシェール・ガス輸入やオーストラリア/カタールからの液化天然ガスの輸入を増大させることも急ぐだろう。

 だが、最も確実な「脱ロシア・天然ガス」の有効な決定打は、原発への大転換をすることである。旧・東欧諸国は、全力をあげて原発への大転換に舵を切るべきである。原発こそ、ロシアからの自由と独立のための、神からの賜物でなくて何であろう。

日本は、樺太液化天然ガスを一滴でも輸入してはならない  

 日本人は、いつしか国家の危険やリスクをいっさい真面目に考えない夢遊病者的な民族に成り下がった。津波があれば津波、原発事故があれば「脱原発」革命とか、実に幼児性丸出しの現実から遊離したお祭り騒ぎに明け暮れるとは、日本人がもはや何事にも無関心のアパシ―化した現れである。

 エネルギーという、日本国の経済の血流への、日本人に漂う無関心と無責任は、日本がすでに国家の体を為してはいないからだ。だから、ウクライナが、ロシアに天然ガスで一国全体の政治を牛耳られようとしている事態を、「他山の石」だと頬を強張らせ、それを教訓にして日本の「脱ロシア」を訴える政治家すら一人もいないのだ。

 “プーチンの犬”になりきって、日本を「ロシアの極東」に併呑されてもいいではないかとすら考えている“異常な親ロ派”安倍晋三に対する批判の声すら全くないのは、日本が国家でないことの証左だろう。

 プーチンは、すでに“ロシアの犬”で馬鹿丸出しの安倍晋三には、万が一にも北方領土を返還しない。代わりに、日本を属国にするための方策、たとえば、樺太と北海道との間に天然ガスのパイプラインを敷設を安倍に約束させて、その後、安倍をポイ捨てするのは既定路線。  

 日本が北方領土を奪還したいなら、まず、日本の固有の領土であった樺太からの天然ガスの輸入を全面ストップして、日本国の国家安全保障を確固たるものにすることが、最低限の国策。現在のロシアからの天然ガス輸入は、日本の総輸入量8,731万トンの内、「9.5%(2012年)である。これなら、原発を数基ほど再稼動させれば充分。日本人は、国家の安全があって始めて個人の安全があり平和が選択できることを知るべきだ。我が国の主力エネルギーを原発依存に再転換し、ロシアからの天然ガスや石油の輸入をゼロにする、これこそ日本の経済発展と国家安全の要である。

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