“プーチン皇帝の臣下”メルケルと日独伊三国同盟を演出した「黄色い猿」安倍晋三の外交醜態──「ヒトラーの罪を日本に分担させるドイツ流の策謀すら読めない、戦後七十周年を機に動き出す“中露の対日軍事同盟”の大脅威が感知できない、中共の大軍拡に無為を弄び屈服降伏の道に日本を陥れる」安倍晋三の幼児外交で、危殆に瀕する日本

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筑波大学名誉教授  中 川 八 洋

 ドイツの女首相・メルケルが、「戦後七十周年」の二〇一五年三月九日、日本を訪問した。日本にとって、このメルケル訪日は、迷惑千万。日本の国益を大いに害したからである。本稿は、メルケル来訪はなぜ、日本に有害無益かぎりなく、日本国としては断固拒絶すべきだったかについて、概略、解説するものである。

親・共産主義のメルケルは、「反共」保守主義の英首相サッチャーとは対照

 メルケルの心底を占めている思想・イデオロギーについては、「ドイツ保守政党(キリスト教民主同盟、CDU)の党首だから…と、左翼や極左ではあるまい」との安心が内外で一般的。だが、自分の深層の真意を隠しとおせる才は、メルケルの生まれつきの“穏やかなカメレオン性人格”のなせる技ではないのか。

 このことは、その血統と東ドイツ共産党(=ドイツ社会主義統一党)独裁体制下で「体制側」であった経歴において、遺憾なく証明されている。まず血統。メルケルの祖父はポーランド人で、祖母はポーランド民族の中でも超少数の支族カシューブ人。

 その長男でメルケル首相の父親は、外国であるドイツ民族の西ドイツでも東ドイツでも、全く無難な生活をした。ルター派系の牧師だった父親は、多くの者が自由を求めて東ドイツから西ドイツに命を捨てて逃亡脱出を図っている時代に、逆に西ドイツから東ドイツに移住した。しかも、東ドイツでは、カソリックなどキリスト教徒の多くは東ドイツ共産党と対決し弾圧の中で苦難を強いられていたのに、メルケルの親父は、東ドイツで“体制派”キリスト者として共産党独裁政権のお気に入りだった。完璧な共産主義者だし、権力迎合術が巧みだったからだ。

 しかも、メルケル自身、父親と同様で、“共産党独裁政権に忠誠的”とみなされ、ベルリン崩壊より三年前の一九八六年、特権的な西ドイツ旅行を認められている。この時のメルケルの思想調査は、シュタージュ(東ドイツ秘密警察)がしており、それが「メルケルは完全な共産主義者だから、西ドイツへの国外逃亡の危険なし」と認定した事実を、そう簡単に無視してよいものだろうか。

 メルケルは旧東ドイツのマルクス・ライプツィヒ大学卒の理論物理学者上がりだし、サッチャーはオックスフォード大学の化学科卒で、両者とも今や日本で流行の“理系女子”出身の政治家。ために、サッチャーの“鉄の女iron lady”に比して、メルケルは“鉄のお嬢さん eisernes madchen”とも言われる。が、双方の類似は理系女子の一点のみで、それ以外には共通性が全くない。ほとんど真逆である。

 裏と表のないサッチャーは、公衆に対する雄弁と説得で世論を変えていく、実直一直線の政治家。しかも、右手にバーク/左手にハイエクの正真正銘の保守主義者。だから、保守主義からの反共反ソを生涯貫いた。当然、ソ連体制との妥協を断固排撃した。侵略には軍事力の行使で対抗して粉砕するという中世的な騎士道の精神を貫いた。一九八二年のフォークランド島奪還しかり、一九九〇年のイラクのクウェート侵略を軍事力で排除する対イラク戦争を主導したのもしかり。

 一方メルケルは、東ドイツの共産党独裁体制を支持し、“宗主国ロシアの属国で好し”と、ロシア語はバイリンガルになるまで習得した。親ソ・親ロシアは、メルケルの血肉になっている。つまり、メルケルにあるのは、党内権力闘争に長けた才能であり、(マーガレット・サッチャーとは一八〇度逆で)自らの思想信条を完全に秘匿できる才能。しかも、保守主義思想はゼロ。サッチャーとは似ても似つかない。

帝政ロシアの女皇帝エカチェリーナⅡ世を崇拝するものが、プーチン主導のウクライナ侵略を心底から阻止しようとするか? 万が一にもありえない!

 ロシア語が母国語のごとくに堪能なメルケル首相は、夫であるピョートルⅢ世皇帝を殺害してロシア皇帝の座に即いた(東プロイセン生まれのドイツ女性)女帝エカチェリーナⅡ世を尊敬し、エカチェリーナの肖像画を首相執務室に飾っている。通常のドイツ首相であれば、執務室に掲げるのは、ドイツ帝政の偉大な政治家ビスマルクか、その皇帝ウィルヘルムⅠ世の絵のはず。

 しかも、帝政ロシアは、ドイツにとって全くの外国。さらに第二次世界大戦で領土のかなりの部分(十七万平方㎞)をスターリンによって奪われ(ポーランドの領土をソ連が併呑し、その同じ面積をドイツが代わりにポーランドに割譲)、東ドイツ(もともとはドイツの中部地帯)はソ連直轄下の植民地になった。

 このように、ドイツの領土を奪い“東ドイツ”を収奪し続けたソヴィエト・ロシアの前身であるロシア帝国の皇帝の絵を掲げるとは、異常な親露主義だけでなく、ドイツを祖国とは考えていない“(ドイツ国籍はあるが無国籍人的な)根無し草” メルケルの本性が露呈している。

 メルケルは血統上はポーランド族なのに、ポーランド国にも何の愛着も持っていない。祖国喪失のメルケルの人格は空無で、「ポスコロ」に謂うまさに“ディアスポラ(地球放浪者)”。この祖国喪失性は、オーストリア人で事実上の無国籍人だったヒトラーと同種の異常人格ということになる。ヒトラーがドイツ国籍を取得したのは一九三二年で、総統になる前年であった。

 そして、エカチェリーナといえば、今、プーチンの新ロシアが侵略し続けている、そのウクライナやクリミヤ半島などの黒海北岸一帯をトルコ帝國から侵略戦争の牙でもぎ取った“戦争大好き/領土膨脹の女性皇帝”。この事実は、ウクライナをロシアから防衛するかに見せるメルケルの不確かな姿勢は、プーチンのウクライナ侵略を援護する犯意隠しの可能性が高いことを示唆している。

 単刀直入に言えば、メルケルは“プーチンの犬”以上の“プーチン皇帝直属の臣下”である可能性が高い。それはまた、メルケルに仮に祖国があるとすれば、(東ドイツ時代の)旧宗主国ロシアということだ。

 とまれ、エカチェリーナのウクライナ・黒海・アゾフ海への侵略史をほんの少し復習しておこう。

 トルコに対してエカチェリーナは二度戦争している。また、この二つの戦争の間の一七八三年には、戦争をせずにトルコのクリミア汗国への宗主権を奪い、その直後にクリミア汗国を併呑した。これによってアゾフ海はロシアの内海となった。また、この年ただちに、軍港セヴァストーポリの要塞化と黒海艦隊の建設に着手した。クリミア半島からのタタール人追放とロシア人入植の開始も、この一七八三年。

 蛇足。一七八三年とは、イギリス北米植民地十三邦が母国から独立し、新生の米国が一七八九年春に誕生する基盤ができた年。

 さて、ロシアのトルコへの二度の戦争とは、一七七四年一七八七~九一年。ロシアは両者とも勝利し、前者のクチュク=カルナイジ条約では、ドニェープル川・南ブーグ川の河口とケルチ地峡を奪い、ロシア民族初めての黒海進出に成功した。後者のヤッシー条約では、ドニェーストル河と南ブーグ川で挟まれた領土(この地の主要都市がオデッサ)をトルコから奪うことに成功した。

 一七七四~九一年の十七年間かけたエカチェリーナの対トルコ侵略戦争の勝利はまた、アゾフ海だけでなく黒海北半をほとんど事実上ロシアの内海とした。戦略的要衝の地である黒海とクリミア半島を巡る戦いは、キリスト教徒の英仏がイスラム教徒のトルコに同盟しての対露クリミア戦争(1854~6年)へと繫がっていく。

 さて、問題は、現在の劣勢甚だしいウクライナ。現在のウクライナとは、エカチェリーナに侵略され続けた“十八世紀後半のトルコ”を再現させられている。このことは、上記の簡単な歴史素描で理解できるだろう。プーチンによる、二〇一四年のクリミア半島強奪は、まさに、一七八三年の、トルコからのクリミア汗国の強奪そっくり。つまり、プーチンは、“第二のエカチェリーナ皇帝”を演じている。

 ならば、エカチェリーナに心酔する者が、プーチンに心酔しないということなどありえまい。

ヒトラーのユダヤ人虐殺の責任を安倍晋三にも分担させ転嫁したメルケル

 メルケルの顔や仕草をTVの画面だけからだが観察していると、“無国籍人”あがりの独裁者ヒトラーと(スターリンに特段の信頼を寄せた)その外務大臣リッベントロップの二人をブレンドしたゾンビに見えて、嫌悪感以上の戦慄が背筋を走る。なぜだろうか。

 それは、安倍首相との首脳会談におけるメルケルの、墓場から生き還ったゾンビが呪詛の言葉を投げかけるような、その対日侮蔑対話にはっきり現れている。メルケルは、首脳会談後の共同記者会見で、そのような話をしたのを認めた(三月九日)

「戦後のドイツでは、ナチスが行った恐ろしい所業について、我々が担わなければならない罪について、どう対応するかという非常に突っ込んだ議論が行われた。過去の総括が、和解の前提になるというドイツの経験をお話させて頂いた」(注1)

 こんな話を、我が日本国にわざわざやってきて、また日本国の首相にするとは、何という無礼千万。日本外交史上に残る対日侮蔑の言辞以外の何物でもない。

 岸田外務大臣は、直ちに駐日のドイツ大使を外務省に呼びつけ、厳重なる抗議を申し入れしなければ、日本国の国際的な名誉と体面の維持はできない。メルケルに対する“外交手段による宣戦布告をせよ”と、岸田外務大臣に申し上げたい。

 ヒトラーのユダヤ人百五十万人殺害は、我が日本国はいっさい関知しない事柄。ドイツ内政が生んだ人類史上極めて稀なヒトラーの国内少数民族・疎外された少数宗教信者への大量殺戮犯罪はドイツが背負う問題であって、この問題での日本のスタンスは、永遠にヒトラーとドイツを糾弾し続ける立場にある。

 しかも、日本は、この殺戮されるユダヤ人救出を行ったことで、世界に知られた“東洋のシンドラー”杉原千畝(外交官)や“亡命ユダヤ人の満州国通過を独断で許可した”樋口季一郎(陸軍将軍)などの世界的な人物を輩出している。ヒトラーのユダヤ人ホロコーストを阻止するものがゼロだったドイツとは逆で対照。

 杉原は有名なので略。樋口は、陸軍少将のハルピン特務機関長で、二十名ほどのユダヤ人を満州国に非合法入国させて救った偉大な軍人(厳寒のオトポール駅の美談、1938年3月)。なお、「二万人を救った」説は、「十」を「万」と誤植したことから流布したものと思われる。この数は、杉原の“ユダヤ人救出六千名”に比すれば余りに少ないが、樋口の偉大さは、数ではない。当時日本のヒトラー・ブームや日独伊三国同盟締結への動きを神聖視した陸軍内部の将官にあって、それに抗して人道と常識を失わない樋口の美徳は、真正の勇者でなければできない。国際的な樋口称讃は、適切にして妥当。

 話を、“現代のリッベントロップ”メルケルが、なぜ日本を突然、目的不明のまま来日したかの、問題の核心に戻そう。

 メルケルにとって、来る五月七日はドイツ降伏の七十周年で、最悪の日となる。なぜなら、この日、世界はドイツのユダヤ人虐殺を思い出す日だからだ。そこでメルケルは、頭の悪さが世界の首脳の中で突出して目立つ安倍晋三に目をつけた。

 五月七日の前に、「第二次世界大戦で悪いのはドイツだけではありませんよ。日本もドイツと同罪の悪の国です。しかも、ドイツは戦後深く反省したのに、日本はいまだ反省しない国で、この点で日本はドイツよりはるかに悪い国です」、と世界に発信すれば、その効果によって、ドイツのイメージを幾分かは好転させうるのは確かである。

 しかも、外交暗愚の安倍を活用してドイツの罪の半分を日本に転嫁するアイディアは、中国共産党の独裁者・習近平と共同謀議した可能性も否定できない。中共とメルケルの謀議容疑問題はさておき、安倍晋三が、メルケルの目的不明の来日を訝らなかったのは、メルケルが直覚した通り、成蹊大学卒の安倍晋三はIQも学歴も低く国際水準では“知的下層民”だからだ。一流大学の物理学博士号を持つメルケルにとって、安倍晋三は、人間以下の“黄色い猿 イェロー・モンキー”に過ぎない(注2)

 そこでメルケルは、①ドイツにとって永遠の罪であるユダヤ人大量殺戮の責任を日本に分担させんとの悪意を実効あるものにすべく、安倍との首脳会談をセットしたのである。しかも、日本とは全く無関係なヒトラーのユダヤ人ホロコースト問題を、歴史の教訓として安倍に教示してあげるとばかりの上から目線で、日本の首脳に語るなど、外交マナー違反も度がすぎる。だが、外交マナーのイロハも知らない無学・無教養な安倍は、相手がそのような侮蔑対話を始めた瞬間に席を立つ、日本国の総理としての矜持もない。

 さらに、メルケルは、ユダヤ人大量殺戮問題をいつの間にか全ヨーロッパに兵を進めたドイツの侵略戦争に摩り替えている。メルケルの「過去の総括」の「過去」は、ユダヤ人ホロコーストを指すのか、それとも北欧や東欧そして南欧・アフリカへの侵略を指すのか。全く判然としないではないか。判然としないのは当然で、詭弁の達人メルケルは、摩り替えの詭弁を駆使しているからだ。

 しかも、この詭弁の目的は、②日本が南京虐殺をしたとか、朝鮮人女性を強制連行して従軍慰安婦にしたとか、それを暗に指して、日本糾弾を行うもの。要するに、「歴史=過去を総括しない安倍晋三は(=日本は)、悪い国」「こんな日本に比べると、過去を反省したドイツは何と善い国なんだ」と、世界に宣伝したのである。その効果は、かなりのものになった。

 安倍晋三は、メルケルと首脳会談をすることによって、歴史問題に絡む自分のスタンスを悪化させた。メルケルを一目見て、日本を日独伊三国同盟に引き摺り込み、そして日本にとって最悪の戦争結末となった日ソ中立条約へと、日独伊ソ四ヶ国同盟を日本に洗脳した“リッベントロップの再来”だと見抜けないのは、安倍晋三が、リッベントロップと同様、ヒトラーとスターリンに魂を抜かれた“売国奴”松岡洋右の親族だからか。それとも、大学とはいえない“成蹊大学卒の滑舌芸人”だからか。

メルケル来日に大はしゃぐ朝日新聞の底意が見えない“暗愚宰相”安倍晋三

 メルケル来日の裏の詳細を私は知らない。が、朝日新聞がかなり絡んでいる事は、安倍晋三だって知っていた。つまりメルケルが、安倍との首脳会談より、朝日新聞主催の講演そのものを主眼として来日することを、事前に安倍は了知していた。

 この情報が事前に与えられていながら、メルケルの来日の意図が国際的な「反・安倍」ムード形成とその延長上での「反日」宣伝だと推断できなかったのは、安倍晋三には、もはや日本国の外交を任せられないということだ。一定レベル以上の外交見識があれば、一国の総理として、これほど怪しげな行動をとるメルケルとの首脳会談など必ず断る。少なくとも、五月七日以降にセットする。

 しかも、メルケルの本性が旧・東独系の共産主義者であることもあって、メルケルとは、現在の世界では、金日成を崇拝する“北朝鮮人”菅直人と同じ、稀有な「脱原発」信奉の極左思想を持つ首脳。だから、福島原発3・11の二日前の「3月9日」の訪日を強く希望した。

 この事実だけでも、原発推進の安倍晋三への嫌がらせ、世界の眼を安倍非難に釘付けしようとの害意が露わ。が、幼児的な安倍晋三は、これすら見抜けなかった。外交の“暗愚宰相”安倍晋三は、国際的に“ダントツ優秀”と評価される人物を外務大臣に起用する必要に迫られている。

(2015年3月11日記)

1、『朝日新聞』2015年3月10日付け。

2、「日本人は、イエロー・モンキー」だと世界に向かって日本人への人種差別の侮辱をなしたのは、ドイツ皇帝ウィルヘルムⅡ世。これに直ちに抗議したのが、米国のテオドア・ルーズベルト大統領。この小さな歴史事実は、“親米・反独”でない日本人は、日本の国益に違背する“非国民”であることを示唆する。

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