筑波大学名誉教授 中 川 八 洋
6月30日、ウクライナ軍は、小麦輸出の大型貨物船の海上ルート「オデーサ→ルーマニア領海→ボスポラス海峡」上に位置する、ズミーイヌィ島(漢字表記「蛇島」)を奪還した。ロシア国防省も、いつもはダンマリなはずが慌てふためき、「同島の駐留軍を撤退させた」と発表した。
2月24日、開戦と共にロシア黒海艦隊が占領したズミーイヌィ島は、ルーマニアのドナウ側河口から37㎞の地点にあり、NATOにとっても戦略的要衝の島。ネットの動画を見ているとウクライナ製の自走榴弾砲「ボフダーナ」が、この37㎞遠隔の島に着弾していた。ウクライナ兵器産業の能力がかなり高いのに感心した。
なお、私はかねてから、日本が供与するハプーンを四基づつ束ねた25セットを、10トントラック二十五台を改造した臨時発射台に搭載し、(ヘルソンの西部を含めて)オデーサからドナウ河口まで満遍なく配備することを提案してきた。黒海の西側沿岸に出没するロシア黒海艦隊の水上艦艇を一隻残らず撃沈し、ボスポラス海峡までの海上ルートの安全確保を確実にするためである。
むろん、ズミーイヌィ島を侵略したロシア軍に、ハプーンを雨霰とお見舞いすることも含んでいた。今般の奪還報道には、私が予定していた“日本からのハプーンに感謝する”が欠如しているのは、ひとえに岸田政権を蝕む《対ロ忖度“病”》からの、日本国の武器供与を禁止する臆病風が原因。
さて、ズミーイヌィ島の奪還で、黒海西海岸沿いの海上の安全は大いに好転した。が、「オデーサ→ルーマニア領海→ボスポラス海峡」ルートの海面下には、ロシアのキロ級潜水艦が常時二隻は張り付いており、オデーサ港に封鎖されている約百隻の小麦貨物船の出航は、今なお、不可能。
西側が仮に対潜駆逐艦三隻を供与しても、ウクライナには実態として海軍はなく、その慣熟訓練に二年間が必要で、現時点の小麦輸出には間に合わない。私は、国際法・中立法規に抵触せず、キロ級ロシア潜水艦の撃沈をどうすれば可能になるか、2月24日からずっと思案している。が、妙案が浮かばない。それはともかく、ウクライナとNATOの戦略的要衝「ズミーイヌィ島」“無血奪還”は、実に慶賀に堪えない。6月30日夜、ネットでこの報を見た時、私は思わず「万歳!」と叫んだ。
“ウクライナついに蛇島“無血奪還”に成功。ならば日本も、北方四島“無血奪還”に国民挙げて爆走しよう──無交渉/無条約のみが、北方四島を確実に取り戻す唯一無比の賢策” の続きを読む