筑波大学名誉教授 中 川 八 洋
米国のシンクタンク「CSIS 戦略国際問題研究所」の(国務省と共同した)報告書は、「首相補佐官」今井尚哉と「幹事長」二階俊博の“二階・今井コンビ”が、安倍晋三をして対中宥和appeasementに誘導してきたとしている。古森義久の記事である(2020年7月27日、産経ニュース)。
語彙「宥和」において、米国・国務省は、安倍晋三を、1938年秋のミュンヘン会議でヒットラーに媚びたチェンバレン英国首相に重ねている。これは習近平をヒトラーに擬え、日本に対し、一日も早く“媚中の安倍”を引き摺り降ろし、反・支那の「チャーチル」的政治家を首相にするよう、間接的に要請していることを意味しよう。
が、日本の悲劇は、安倍晋三が、“土井たか子の化身”今井尚哉を馘首することも“支那人以上に赤いチャンコロ”二階俊博を幹事長ポストから放逐することもしないだろうこと。それだけでない。ポスト安倍でチャーチル的な人材は、日本の国会の隅から隅まで探しても存在しないこと。日本における政治家のスーパー劣化は絶望的状況。日本の政治家は、米国から緊急輸入する必要がある。
ポンペオの歴史的演説「共産支那と自由世界の未来」は、“逆”ニクソン・ドクトリン
古森記事の一週間前7月23日(米国時間)、ポンペオ国務長官らトランプ政権“反共四銃士”が、わざわざニクソン大統領記念図書館(カリフォリニア州)まで出向いて、米国の対中外交政策の歴史的転換を世界に訴えた時、私は感極まった。何故なら、(24歳だった)私は、不快の余り絶句した五十年前のニクソン大統領のグアム演説(1969年7月)を思い出したからだ。
1969年7月、「友邦・南ベトナムを捨てるとは、クウェーカー教徒・ニクソンとは、何という戦争恐怖症の病気持ちか!」「100%真赤な嘘のKGB製ペテン演技《中露対立》が見抜けないとは、スーパー外交音痴のニクソン野郎メ!」と怒り心頭に発し髪が逆立った。この時に頭をよぎった嫌な予感は、三年後に的中した。KGB系のコミュニスト大平正芳と社会党左派系・田中角栄のコンビが独走して、1972年10月、“日本国の友邦”台湾を斬り捨て“日本の敵国”と日中国交回復して、自民党は一気に左旋回し社会党・共産党になってしまった。保守の自民党は、田中角栄が総理になった瞬間、日本から完全に消えた。