筑波大学名誉教授 中 川 八 洋
ウクライナの戦況は、思わしくない。このところ私は落ち込んでいるのは、この戦況の所為。毎朝、天照大神を祀る神棚にウクライナの早期必勝を祈願しているが、私の祈りはどうやら足りない。正月には、ウクライナ必勝祈願を明治神宮/乃木神社/東郷神社にお詣りし、2024年夏までのウクライナ全面勝利と戦争終結を期したい。これからの世界の法秩序と平和は、早期のウクライナ勝利にかかっている。この世界平和と大義のためにも、世界中の国々は、ウクライナの防衛戦争勝利にもっと積極的に関与すべきである。核大国ロシアの侵略は、他人事ではなく、明日は我が身だと、特に日本人は正しく自覚し、正しく怖れるべきである。
決定が遅すぎる米国バイデンの武器供与を、さらに遅らせているのは“極左”オースチン国防長官か
今では愚痴になって詮ないことだが、ウクライナが6月5日に開始した反転攻勢が半年を経て大きく劣勢に陥っている主な原因は三つ。
第一番目は、欧米の武器供与の決定が余りに遅いこと。特に、F16や長距離ミサイルの供与を半年以上も出し渋ったことが、主力を南部へルソン州からザポリージャ州南半へと突破させる合理的な領土奪還作戦の実行を不可能にした。特に、「ケルチ大橋を落とせば、プーチンは戦術核を使う」という非現実の恐怖に囚われた米国バイデン大統領が、ケルチ大橋を攻撃させない、暗愚極める逆走策をウクライナに強制したことが、ウクライナの反転攻勢を岩礁に乗り上げさせてしまった。
バイデン政権には、「米ソ核戦争だって? ロスケよ、やってみろよ!」と、ソ連を呵々と嘲笑した、1981~4年レーガン/Richard Pipes コンビのようにロシアに精通した核戦略家が一人もいない。対ロ核戦争に怯える“反米の極左”オバマ大統領以来、1980年代にレーガンが育成した正統核戦略家は今では米国に一人もいない。この情況は、米国の核の傘に依存する日本にとっても、実に深刻な事態である。