筑波大学名誉教授 中 川 八 洋
冒頭から脱線するのは論考としては非常識にすぎるが、読者には、何分ともご海容をお願いしたい。
脱線Ⅰ;米バイデン大統領、射程300㎞MLRS(多連装ロケット)の対ウ供与を拒否
私は、後述する理由で、米国の射程300㎞MLRS(多連装ロケットシステム)のウクライナ供与を、ここ一ヶ月以上、まだかまだかと首を長くして待った。が、5月30日、バイデン大統領は「この長射程MLRSは供与しない」と表明(ロイター)。私は、がっかりした。
私が、射程300㎞MLRS供与に拘った理由は、露烏戦争の勝敗(=ウクライナの勝利)を決めるのは次の三つと考えるからだ。そして、射程300㎞MLRSは、Aに一定以上の戦果をもたらすからである。なお、BとCについては未だ策が見つからない。私の軍略家としての才は、大村益次郎に及ばない。
A、クリミア半島「軍港」セバストポリを破壊尽し、ロシア黒海艦隊司令部「機能」を崩壊させる事。
B、ケルチ海峡大橋(2015年1月契約、2018年5月道路開通。2019年12月鉄道開通)を破壊して、ヘルソン州やクリミア半島への、ロシア軍の陸上による兵站輸送力を不能にする事。
(備考)なお、ケルチ海峡大橋の鉄道が開通したのは2019年12月。この時、プーチンはヘルソン州&サボリージャ州&マリウポリへの侵略の意志を固めたはず。
C、ロシア黒海艦隊の潜水艦部隊の母港は、セバストポリではなく、ケルチ海峡より南東100㎞ほどのノボロシースク。このロシアの潜水艦基地を使用不能のレベルに破壊尽くすこと。