筑波大学名誉教授 中 川 八 洋
ガザ軍事作戦のイスラエルに対する、世界の風当たりは、常軌を逸して異様。余りに過激だし過剰に偏頗。不自然すぎる。
2001年ビンラーディン9・11テロに対し、米国は直ちに「アフガンに潜むテロ組織アルカィーダ攻撃」を開始。この時、世界は、これを自衛権の正当な行使だと納得し、しかもその迅速さに感心もして拍手すらした。2023年10月7日以降のイスラエルの「ハマス撲滅軍事作戦」を、この2001年9月~12月の世界と比較すると、相違が大きすぎる。看過してはなるまい。
テロ組織撲滅に敢然と剣を振るうイスラエルが称讃されるのではなく、逆さに轟轟たる非難を浴びる状況は、2020年代の世界が、どす黒い“無法な野蛮主義vandalism/barbarianism”に支配されている証左。確かに、十三世紀蒙古人プーチンの2008年グルジア侵略から、“無法な野蛮主義”が世界を席巻するようになった。2014年3月のロシアのクリミヤ半島侵略・併呑で、“無法な野蛮主義”は本格化した。
だが、目をウクライナだけに奪われてはいけない。2024年2月16日、イスラエルの自衛権行使を支持する米国バイデン大統領が、ハマスの軍事拠点の一つラファへのイスラエル進撃制圧を「しないよう」発言した事例も、一見すればマイナーだが、この“無法な野蛮主義”に数えられる。
なぜなら、このバイデン発言は、一般ガザ・アラブ人への被害を避けるためとの妄想型美名に粉飾されているが、イスラエルの自衛権行使を阻害し、ハマスのテロ“容認”をしている。ネタニヤフ首相は即時、バイデンに拒絶を通知したが、この方が世界の法秩序維持に寄与し、世界平和に貢献する。今、世界で、無法な野蛮主義と戦っているのは、ウクライナとイスラエル。両国の、自国と世界の平和のために自己犠牲する騎士道精神には、ただただ頭が下がる。
また、バイデン大統領は、パレスチナに対して包括的和平案を準備している。が、度が過ぎた時期尚早。ナンセンス限りなく、絶句するほかない。2024年3月時点で早々とパレスチナ和平を唱道するなど、荒唐無稽な妄想。それは、イスラエルがハマス殲滅と人質奪還をした後であるべきもの。また、ハマスの“共犯者”UNRWA解体が国連で定まった後の問題。ガザ完全更地化も同時に提案されていないとすれば、このようなパレスチナ和平協議の開始は、検討にも値しない。
パレスチナ自治政府が「ガザ消滅」を約し「ヨルダン川西岸で、テロ団体が決して萌芽しない情況を創った」時には、新「オスロ合意」を確かに協議してもよい。この意味で、上記のバイデン大統領の勇み足は度が過ぎており、論外。バイデンは、庭に朝顔の種を蒔き、「明日、咲いてくれよ」と声をかけている老耄老人になっている。このような戯言は、米国の信用を傷つける。バイデンよ、発言には理性の自制をかけ、もっと慎重であれ!
““野蛮主義の暗黒時代”に突入した世界──《明日の日本は、今のウクライナ/今のイスラエル》が見えない日本人” の続きを読む