筑波大学名誉教授 中 川 八 洋
ウクライナの東部情勢は、ウクライナの方が敗北を重ね決定的に後退している。特にルハンシク州では、二つ合わせて州の副都的なシェヴェドネツィク/シチャンシクは既に包囲され陥落する可能性が高い。この場合、イジュームとザポリージャを結ぶ線までがロシア制圧区域となるだろうから、再びハルキウがロシア軍に包囲されるし、東部南部全体でウクライナ軍は相当な苦戦に陥る。まさに今、ウクライナは、大後退かそれともロシア国境まで進撃できるかの瀬戸際。情況からして戦況の帰趨は決してウクライナに甘くはない。
が、ロシアKGB第一総局の完全支配下にある日本の新聞・テレビは、意図的にウクライナの戦況を報じようとはしない。報じれば、日本国民はウクライナ側に付いているので、日本人の多数に「武器を送れ」の声がまきおこるからである。現に、ウクライナの劣勢は、ウクライナ陸軍保有の榴弾砲と戦車と砲弾の不足が決定的。米国が送った90門の榴弾砲は、ハルキウ州/ヘルソン州/ザポリージャ州の最前線にも分けており、その全てをルハンシク州/ドネツィク州の前線に配備したわけではない。
榴弾砲や多連装ロケット砲などの火力部門では、東部戦線の現在のウクライナはロシア軍の七分の一。これほど貧弱だと士気の高さでカバーできる範囲にはない。今ではウ側が、一方的に押し戻されている。東部戦線の榴弾砲は少なくともあと100門以上が必要。火力部門の戦力でこれほど劣勢だと近接戦はできないので、ウ軍得意のジャベリンなどはほとんど役に立ない。